2023 Fiscal Year Research-status Report
大規模な実例データに基づいた修辞性を持つ構文の同一性・変異・伝播に関する研究
Project/Area Number |
23K12164
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
伊藤 薫 九州大学, 言語文化研究院, 准教授 (30769394)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | レトリック / 修辞表現 / 言語資源 / 構文文法 / 構成の反復 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は「構成の反復」と呼ばれる修辞表現に関する文献調査、構文に関する理論研究、用例収集とデータ構築を行い、成果について研究発表を行った。 構成の反復に関する文献調査として修辞技法についての和書・洋書を収集し、構成の反復に関わる修辞表現の分類について調査した。また、収集した文献の中から用例が豊富に含まれるものを選び、約1,000件の用例を電子化した。現在は構成の反復の典型例とみなすことのできる用例と関連するが別種とみなすべき用例が混在している状態なので、今後の研究に使いやすいよう整理する予定である。 また、構文に関する理論研究としては、構文文法と呼ばれる分野の文献を調査し、これまでの言語学において「構文」と呼ばれてきたものと、「構成の反復」で修辞効果をもたらす言語的特徴の関係を考える上での基礎的な概念を整理した。また、暗示引用と呼ばれる修辞技法との関連を考察した。 さらに、これらの基礎調査に基づき、電子化した用例に付与すべき言語的特徴を検討した。その結果、構成の反復を記述するには音韻・形態・意味という言語の基本的特徴を様々な粒度で記述することが望ましいが、付与の効率性を考慮し、既存のプログラムを利用してできる限り処理を自動化することとした。そのための枠組みとプログラムを自然言語処理の先行研究や、それらの研究成果として公開されているWeb上のツールから選定した。 加えて、この過程で得られた知見をもとに、言語学分野で構築される修辞表現についての言語資源が持つ性質を考慮し、自然言語処理分野で主に構築される言語資源の性質と対比しつつ、今後の効率的な言語資源構築のための戦略について研究発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該研究課題のテーマは「大規模な実例データに基づいた修辞性を持つ構文の同一性・変異・伝播に関する研究」であり、「構成の反復」と「暗示引用」という2つの修辞表現を主な対象としているが、このうち「構成の反復」については当初の予定を超えて進展している。これは文献調査中に大量の用例が収録された文献を発見できたためである。 一方、「暗示引用」についてはSNS上のデータを機械的に収集する予定であったが、これはTwitterから収集する予定であった。しかし、Twitterが買収され2023年7月にXへ改称され、機械的なデータ収集についても制限が強くなったことから、当初予定していたようなデータ収集が困難な状況にある。このため、研究テーマのうち「伝播」についての目標設定を見直す必要に迫られている。
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Strategy for Future Research Activity |
対象となるう2つの修辞表現のうち、「構成の反復」については順調に進展しているため、2年目は用例に対する情報付与(アノテーション)を主に進め、言語資源構築と、容易に付与可能な特徴を用いた分析を主な課題とする予定である。 一方、「暗示引用」については【現在までの進捗状況】に記載した通り、用例の収集先について課題を抱えている。当初予定していたような話者を特定した上で引用・伝播の関係を捉えることは困難だが、時系列情報が紐づけられているテキストデータなど、若干情報の粒度を下げつつも代替となる用例収集先を探すよていである。
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Causes of Carryover |
当初の予定ではバイアウトにより教育業務の代行に使用する予定であったが、学内制度や依頼先の都合により当該年度には業務が委託できなかった。バイアウトのために確保していた予算は主にデータ構築に使用した。 残額は次年度に行うデータ付与に用いる計画である。
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