2023 Fiscal Year Research-status Report
分数と時間の言語表現における発音されない名詞に関する研究
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23K12170
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
辰己 雄太 明海大学, 外国語学部, 講師 (30906681)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 時間の副詞節 / 分数 / 統語論 / 言語類型論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、分数や時間の言語表現について調査を実施し、統語構造に含まれる非顕在的な名詞表現の性質を明らかにすることを目標としている。今年度は、時間に関する言語表現の中でも、特に日本語の「前」のような名詞表現を含む副詞節について、統語論の立場から分析を行なった。「前」などの名詞表現を含む時間の副詞節は、一見すると関係節と似た統語構造を持つが、関係節とは異なった性質を示すことが知られている。今年度の調査では、まず先行研究のデータをもとに、時間を表す副詞節における解釈の曖昧性を精査した。また、最新の統語論の理論的枠組みを用いて、それぞれの解釈に対応する統語構造を提案した。これらの研究成果を国際学会やワークショップなどで発表し、様々な研究者から専門的なコメントを得ることができた。また得られた知見をまとめて、論文の執筆にも着手した。 上記のような時間の言語表現に関する調査と並行して、分数の言語表現についても、複数の言語に関して文献調査などを行い、データを収集した。調査の結果、英語などでは分数を言語的に表現する際に、"two thirds"のように序数を使うが、その他の複数の言語において、英語の "part"に対応する意味を持つ名詞表現が使われていることが明らかになった。また、分数における"part"に対応する名詞表現は、異なる語族の言語において観察されており、このタイプの分数表現が例外的なものではないことがわかった。この観察により、分数の概念を言語的に表現する場合に、言語によって異なるタイプの統語構造が使用されている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
時間の副詞節についての調査を国際学会などで発表することができた。また、分数に関しても複数の言語におけるデータを収集することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
時間に関する副詞節の研究では、日本語のデータが中心になっているので、今後は他の言語に関しても、さらにデータを収集していく必要がある。また副詞節だけでなく、時間に関する他の構文についても調査を行っていく。分数についての調査は、収集したデータを分析し、その成果をもとに学会発表などを行い、専門家からのコメントなどを得る予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は言語データの文献調査と分析を優先して行い、この作業に主に時間が割かれた。このため、物品費の使用や、学会やワークショップへ参加するための旅費の使用が、計画よりも少なかった。今後はさらに質の高いデータを集めるために物品費を使用し、学会やワークショップに積極的に参加するために旅費などを使用する予定である。
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