2023 Fiscal Year Research-status Report
中国語会話における「定式化」技法の解明:母語話者と学習者の比較から
Project/Area Number |
23K12172
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Research Institution | Kanda University of International Studies |
Principal Investigator |
陳 力 神田外語大学, 外国語学部, 講師 (60912194)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 定式化 / 談話標識 / 会話分析 / 中国語 / jiushishuo |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、主に(1)母語話者間および母語話者と学習者の間の中国語会話の収録と文字化、(2)談話標識「jiushishuo」で始まる定式化発話の分析に取り組んだ。 (1) 母語話者間および母語話者と学習者の間の中国語会話の収録と文字化 現有の中国語母語話者間の自然会話(約14時間の録画/録音)の文字化を行いつつ、新たに6時間の中国語自然会話の収録を行った。文字化は7割以上完了している。母語話者と学習者の間の中国語会話の収録は、神田外語大学で約6時間(対面)、他大学で約12.5時間(オンライン)行った。その一部の文字化作業を行った。 (2)中国語「jiushishuo」の談話標識で始まる定式化の分析 談話標識「jiushishuo」で始まる定式化発話(約50例)を中国語母語会話のデータベースから抽出し、会話分析、相互行為言語学の手法を用いて分析を行った。連鎖位置によって、「質問―応答の後の位置」、「語りの途中」、「語りの終了可能な位置」に分類した。分析の結果、質問―応答の後に産出される定式化発話は、話し手(元の質問者)がその応答に対して理解に関わるトラブルがあることを示し、疑問終助詞や上昇調を伴う特徴があるのに対して、語りの途中における定式化発話は、相手の発話に対する理解を提示し、下降調を伴う特徴があり、相手から肯定応答が期待されることが確認された。最後、語りの終了可能な位置における定式化発話は、語り手が言ったことを単に繰り返すことでその語りによって予示された応答の産出を遅らせてこれまで語られてきた内容(の一部)に対して受容性に関わるトラブルがあることを示すことが明らかになった。分析の結果については、日本中国語会話分析研究会が定期的に開催しているデータセッションで、関連研究者と議論し、The 18th International Pragmatics Conference と日本中国語学会第 73 回全国大会でそれぞれ報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
年度内に文字起こし業者に依頼し、新たに収集した母語話者場面の会話データの文字化作業を完了させ、さらに接触場面の会話データの文字化作業の半分を行う予定であったが、中国語会話を精密に書き起こせる業者が日本国内でまず見つからず、莫大なデータを会話分析用のトランスクリプトに書き起こす作業に予想以上の時間がかかった。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の成果を踏まえて、母語話者場面における自然会話の分析を続けながら、接触場面の会話データの文字化と分析作業に取り組む。分析の結果を学会等で発表し、論文としてまとめて学術雑誌に投稿する。また、学習者間の会話データを収集する予定である。
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Causes of Carryover |
2023年度に収集した一部の中国語会話の書き起こしを文字起こし業者を依頼する予定だったが、中国語会話を精密に書き起こせる業者がまだ見つからず、予定されていた文字起こし業者の委託費が残った。 2024年度に予定されている予算と合わせて、文字起こし作業や物品購入に充てたい。
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