2023 Fiscal Year Research-status Report
Research on learning through boundary crossing in Japanese language education at the university
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23K12223
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Research Institution | Ritsumeikan Asia Pacific University |
Principal Investigator |
大原 哲史 立命館アジア太平洋大学, 言語教育センター, 講師 (50906675)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 越境的学習 / SALC / 水平的学習 / 自律・主体的な言語学習 / エージェンシー |
Outline of Annual Research Achievements |
この研究では、日本の大学で学生が言語授業と授業外で自律的に言語学習を進めていくサポートをするための大学の施設である「Self-Access Learning Center(SALC:言語自主学習センター)」を行き来することで、何をどのように学んでいるのかをエージェンシーという概念をもとに考察することを目的とした。データとして、学生が書いたSALCと言語の授業に焦点を当てた大学での言語学習についてのナラティブとその後に実施したインタビューを分析した。大学への入学当初、学生は英語と日本語が「完璧に」でき、英語圏の大学に交換留学に行って、国際的に活躍できる人材になるという大学における理想的な学生像を自分も追わなくてはいけないと思っていた。そのため、テストの点数を上げることや理想的な母語話者のように言語を話すという目標を持って言語の授業に取り組んでいた。しかし、様々な言語を使いながらコミュニケーションをしたり、自分の学習を主導していくことが強調されているSALCに行くことにより、今までは良くないと考えていた日本語と英語(それ以外の言語も)を混ぜて話すことを、決して悪いことではないと捉え直した。それにより、様々な学生や教員と能動的にコミュニケーションが取れるようになり、良い人間関係が構築できた。そして、多様な言語学習や言語使用の視点が得られたことにより、大学における理想的な学生像とは違う、自分が大学生活で本当にやりたいことを主体的に考えることができるようになった。学生は今までニュートラル、またはネガティブだった経験を他者との対話を通して捉え直し、そこから現れた概念を媒介手段として使うことで、自分の直面している状況を変えることができることがわかった。授業とSALCの境界を行き来することにより、状況を変えたり、問題を解決したりするための「変革的エージェンシー」を発揮できたと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、主にデータ収集をする期間としていた。概ね予定通り、学生からのデータ収集は進んでいる。「調査1」としていたアンケートとそのフォローアップインタビューに関しては、アンケートは終わっているが、フォローアップインタビューは実施中である。また、「調査2」としていたオートバイオグラフィとフォローアップインタビューは予定していた人数分のデータ収集は終わった。また、2022年度までに行ってきた関連した予備研究の結果をまとめて発表する予定だったが、予定通りに2023年度に学会で発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、データ分析と研究成果の発信を予定している。「調査1」としているアンケートとフォローアップインタビューを主とした調査は、フォローアップインタビューが継続中なので、まずはそれを2024年の前期で終わらせ、データ分析を進めていく予定である。「調査2」としているオートバイオグラフィを主とした調査は、データ収集は終わっているので、データ分析を進めていく予定である。「調査2」のデータを分析した結果は8月に開催される日本語教育に関する学会で発表する予定である。また、「調査1と「調査2」の研究結果をまとめて、10月に開催されるSelf-Access Learningに関する学会で発表するか、もしくは2024年度末に論文を執筆する予定である。
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Causes of Carryover |
コンピューター・ソフトウェアが日々改善されてきているため、英語のインタビューの文字起こしは簡単に、そしてより正確にコンピューターで行えるようになってきた。そのため、英語のインタビューの文字起こしは、研究補助の人ではなくコンピューターである程度できるようになってきたので、2023年度の研究補助の人件費が当初予定していたものよりも予算がかからなかった。一方、コロナ以降、渡航費(特に海外への飛行機代・学会参加費)は非常に上がっている。2024年度は海外での学会発表を実施する予定なので、研究補助の人件費から渡航費や学会参加費等に予算を回すつもりである。
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Research Products
(1 results)