2023 Fiscal Year Research-status Report
The Framework of Language Education of Multilinguals in Japanese Higher Education
Project/Area Number |
23K12229
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Research Institution | Osaka University of Economics and Law |
Principal Investigator |
李 光曦 大阪経済法科大学, 国際学部, 助教 (00975310)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 異文化理解 / 言語教育 / 他者化と相対化 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は研究の下積みを中心に展開し、そのほか中国語教育関係のシンポジウムを計画し、学会発表を1回行った。 3月に「文化教育の再考:在日中国語教育の現場をめぐって」というテーマのもとで、中国語教育や日本語教育など、言語教育の中に取り込まれがちな「文化」とは何かを問題提起し、教師や学習者の立場、教材・教授法などの方法論、学習環境と学習形式などの外部要因からシンポジウムを企画した。 また、「日本語第二言語教育における「文化教育」の考え」というテーマで発表を行い、主に言語教育の実践と文化の関係性を考察してみた。特に教師の立場で「自分の文化基準を相対化、常に異文化、異言語を見る時には、自らの文化基準で判断せず、異文化での基準を習得することに努め、その基準で判断を下す努力をするように教える」ことの重要性、及び言語学習を通いじて真の異文化理解の力を身につけていくことの重要性を強調した。 今後、こちらの発表に基づき、CHL(中国継承語)学習者が日本社会で生かす「多言語・多文化能力」とは一体何を指しているか、さらに具体的に考察していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は主に枠組みの構築、及び大きな理論基盤の更新に力を入れており、英語・中国語・日本語の文献の整理とまとめを中心に行ってきた。来年度から実際に調査が始まり、データを今まで構築してきた枠組みの中で取り入れることに焦点を当てていきたい。特に継承語教育という概念にめぐってさまざまな理論や実践報告が行われているため、家族言語政策(Family Language Policy)以外に、トランスランゲージングや言語政策の変化も含めて最新の枠組みで今後の研究を位置付けたいと考える。 また、過去の研究協力者に引き続き調査を行うために、今年度は今までのデータの見直し作業も行なってきた。過去に行われてきたデータ分析方法と異なる手法を使用するため、元のデータの整理も含めて再度データの分析を進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今までは第二言語習得や外国語教育の枠組みを参照しながら理論基盤お構築してきたが、今年度は理論基盤の更新によって、主にバイリンガル教育及びマイノリティ教育の枠組みの中でデータ分析を展開していく予定である。 来年度から、「日本高等教育におけるCHL(中国継承語)学習者が受けた家族言語政策(Family Language Policy)を言語機能・言語形態・言語の教育と学習の三つの領域から考察し、どのような家族言語政策が子育ての実践の根底にあるのか、その政策がどのように形成されているのかを明らかにする。」という課題を中心に展開していく予定である。こちらの対象者は今まで調査を続けてきた研究協力者であるため、過去のデータを踏まえながら新たな枠組みの中で研究を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
年度途中に現在の所属機関に移籍したため、今年度は主にこれまでに収集した資料調査及び研究理論の構築を中心に行い、新たな支出はなかった。 来年度から聞き取り調査及びデータ分析作業に入り、博士前期・後期の研究フィールドのもとで、研究協力者数が極めて限られる当分野においてすでに3年から5年にわたって観察してきたCHL学習者17名及びその親に対して、エスノグラフィーによるインタビュー調査を行い、収集されたデータをグラウンディッド・セオリー・ アプローチを使用し、個々のインタビューを関連性のある談話ユニットに分け、概念カテゴリーに沿ってコーティングする予定である。 そのため、研究協力者への謝金及びデータの文字化に関して、代行業務をお願いする予定である。そのほか、研究課題3「日本の外国語教育の枠組みの中で、CHL学習者が受けてきたカリキュラム、シラバス、授業形態、教材、教授法、アセスメントなどの教育実態を調査し、日本高等教育で実施されている継承語教育の現状を俯瞰的に把握する。」においてもフィールドが確定したため、後期からアンケート調査を進めていきたい。
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