2023 Fiscal Year Research-status Report
外交文書を利用した朝鮮燕行使制度の解明―朝鮮朝天使派遣時期を中心に―
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23K12291
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
鈴木 開 明治大学, 文学部, 専任准教授 (80739425)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 燕行使 / 吏文謄録 / 朝鮮王朝 / 壬辰戦争 / 事大文軌 |
Outline of Annual Research Achievements |
採用第一年度目は、壬辰戦争勃発時の朝鮮と明の関係を知ることができる重要史料『国書草録』の研究を中心的に進めた。この史料は韓国学中央研究院蔵書閣が所蔵する朝明間の外交文書を謄写したものであるが、これまでの壬辰戦争研究では利用されてこなかった。そこで、本史料の収録文書数や時期について確定し、各文書の発給者、受信者を整理するなど、今後の研究に活用するための基礎的作業を行った。収録文書のいくつかは、『宣祖実録』などの年代記史料の原史料と考えられ、当時の史料編纂の過程を知る上でもきわめて価値が高いと考えられる。その過程で、同時期の朝鮮と明の間の使者往来を明らかにする必要が出てきたため、実録などを中心に基礎的研究を行った。その成果は、韓国学中央研究院蔵書閣主管の韓日国際学術大会にて報告した。大会では蔵書閣の研究員の先生方とも交流し、史料の保存や活用、公開状況など活発な意見交換を行うことができた。 あわせて、「地政学」がテーマの学会での報告を依頼されたため、壬辰戦争時における日明による朝鮮半島領土分割構想について検討し、発表した。この発表でも『国書草録』や『吏文謄録』などに所収される文書を活用し、同戦争の新たな側面に光をあてることができた。 また明に派遣された朝鮮側官僚の出自や政治傾向を探るため、韓国で出版された社会史関係の研究書の書評報告を行った。本書評により、当時の官僚をめぐる人間関係や、朝鮮における中央と地方の関係について知見を深めることができた。 さらに、本研究の重要史料である『吏文謄録』について考察した論文が刊行された。本論文では、19世紀より『吏文謄録』と同一場所に保存されていた『槐院謄録』との内容比較や伝来過程を考察することで、史料の性格に対する知見を深めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を進めるための基礎的史料を新たに発見することができ、研究に活用するための基礎的作業が完了した。次年度以降では、これら史料に収録される文書を利用して朝鮮朝天使の派遣実態に迫りたい。
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Strategy for Future Research Activity |
朝明外交文書集の所収文書の紹介と検討を通じて、隣接諸分野の研究にも資するような基礎的なデータの作成と公表につとめる。あわせて、関連する韓国語による研究成果の吸収と紹介も行っていく。
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