2023 Fiscal Year Research-status Report
野生動物の移動行動をどのように知り、活用するか:類型化とシミュレーション
Project/Area Number |
23K12323
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川瀬 純也 東京大学, 情報基盤センター, 助教 (80872522)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 地理情報科学 / センサーネットワーク / 野生動物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、野生動物搭載型ワイヤレスセンサーネットワークにおける被覆面積(センサーネットワークがカバーできる実際の広さ)を効率的に広くすることを目的とする。動物の移動行動の類型化を行い、その結果をもとに、一部の個体にデバイスを装着したと仮定して被覆面積が時系列に沿ってどのように変化するのかをシミュレーションして評価する。個体選択や装着個体数を変えながら繰り返し評価を行い、その違いを明らかにし、知見をまとめる。 大規模に野生動物にセンサーデバイスを取り付けて実験を行うには、多くのリスクが伴い、コストも膨大になってしまう。そこで、本研究では、放牧されている家畜から研究用データを取得することとした。2023年度は、実施計画の通り、放牧されている家畜から研究用データを取得するため、乳牛農家での実験実施に向けた調整を行った。しかし、近隣諸国での口蹄疫の流行から、作業員が放牧地に入ることに対し懸念が示されたため、実際に放牧地に入っての作業を断念した。代わりに、日頃から乳牛放牧地に出入りしており、データ収集首輪の装着・管理を行っている地元業者に依頼し、相乗りするような形で(彼らの首輪は脱柵検知や発情検知用)、研究用データの収集を行った。実際に、2箇所の放牧地でそれぞれ約30個体について、6か月・4か月に渡る継続的なGPSデータの収集をすることができた。 これらのGPSデータについて、配列アライメント手法を用いた移動行動の類型化手法の検討を進めている。配列アライメント手法を用いた移動行動の類型化手法においては、日常的に繰り返し行われる(しかし毎日同じわけではない)行動で、かつ人以外を対象とした先行研究は見られないため、いくつかのパラメーター決定手法を設定し、比較検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【研究実績の概要】の通り、状況に応じて研究用データの収集方法を変更したことにより、データの継続的な収集と、データの分析、類型化手法の検討をおおむね計画通り進行できている。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度も、2023年度と同様にデータ収集を行う予定である。また、多様な放牧環境での移動行動データの収集を目的として、対象放牧地を増やす予定でいる。これにより、様々なパターンの移動行動に対応できるような類型化手法を検討していく。 また、遅延耐性ネットワーク (DTN)技術を用いたワイヤレスセンサーネットワークのシミュレーションを行い、被覆面積の効率的な最大化手法などを検討していく。
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Causes of Carryover |
2023年度は、現地作業を行うことができなかったため旅費の支払いがなかった。また、2023年度から2年間使用する予定であった動物装着端末用パーツの消耗品購入を行わず、データ収集の協力業者に対しデータ抽出システム使用料を使用期間ごとに支払う形になったため、2023年度の支払い額が減少した。 また、分析やシミュレーションを行う計算機(PC)について、効率的で柔軟な研究遂行を可能とするため、PCの購入ではなく、データ活用社会創成プラットフォームmdxを利用することに変更した。mdxは利用状況に応じてポイントが都度消費され、かつポイントに有効期限があるため、2023年度中はポイント購入を行わず、主にシミュレーション実験等を行う2024年度以降に購入することに変更した。 以上から次年度使用額が生じた。
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