2023 Fiscal Year Research-status Report
違憲審査における政策的考慮についての憲法理論の構築
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23K12359
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴木 繁元 北海道大学, 法学研究科, 助教 (50962669)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | アメリカ憲法 / 違憲審査 / 憲法訴訟 / 司法の優越 / 最高裁判所 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、アメリカ憲法学における議論を比較研究の対象としつつ、最高裁における、政治部門や国民との相互作用を見据えた政策的考慮を、憲法判断の手法としてどのように位置づけるべきか、ということについて検討する。かかる検討を通じて、我が国の最高裁が現実に直面する社会的・政治的制約を分析・整理したうえで、最高裁がこのような制約に対する政策的考慮を働かせつつ違憲審査権限を行使するために有用となる方策を提示することが、研究の目的である。 今年度は、主として、本研究の基盤となる博士論文の公刊に従事した。具体的には、アメリカ連邦最高裁による憲法判断をめぐる公衆や政治部門の動向を分析することで、「司法の優越」が(公衆、大統領、議会によって)否定された事例、または政治部門によって「司法の優越」が構築された事例の存在を明らかにした。この研究の成果として、博士論文の一部に大幅な加筆・修正を加え、「司法の優越をめぐる法と政治(4):アメリカにおける議論を手掛かりとして」北大法学論集74巻4・5・6号(2024年)を公表した。同論文は、博士論文の連載4回目に該当し、次年度中にその連載を完結させる予定である。 さらに本研究に関連して、「司法の優越」や連邦最高裁における政策的考慮、さらには、司法部と政治部門や公衆間における相互関係に着目する「対話理論」に関連する文献を収集・分析した。その結果、アメリカにおける「司法の優越」や「対話理論」に関する規範的・実証的な分析を進めることができた。 また関連して、近時の我が国最高裁における憲法判断の動向を追うべく、金沢市庁舎前広場をめぐる最高裁判決についての判例評釈を、北海道大学公法研究会において行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、当初の予定通り、博士論文の公刊作業を主として遂行した。さらにその過程において、違憲審査における政策的考慮に関連する先行研究を収集するとともに、各文献の分析を行うことができた。そのため、現在までの研究全体の進捗状況は、おおむね順調であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、関連する国内外の文献の収集・分析を行う。次年度においては、第一に、連邦最高裁が、憲法判断において、「司法の優越」との関係で政策的考慮を働かせてきた事例について、問題となった憲法事例ごとに整理・分析を行う。それによって、①連邦最高裁が憲法判断において政策的考慮を働かせた背景、②具体的な連邦最高裁における判断手法、③判決が下された後の政治部門や州政府、アメリカ人民の動向、が明らかになることが期待される。 第二に、法の支配や法原理部門としての司法部の役割といった規範的な側面から、上記のような司法部による政策的考慮がどの程度許容されるのかを、アメリカにおける議論を参照しつつ、明らかにする。 また引き続き、博士論文の公刊作業を進め、次年度中の完結を目指す。
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Causes of Carryover |
次年度は、本研究の中核的部分を構成する作業に本格的に取り組む予定であることに鑑み、今年度は経費の削減・効率的使用を行った。残った経費については、日米の違憲審査や司法政治学に関する図書等の購入費用に充当する予定である。
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