2023 Fiscal Year Research-status Report
議会内部における議員の権利の憲法的保障:根拠・射程・司法的実現の日独比較研究
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23K12364
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
前硲 大志 山口大学, 経済学部, 准教授 (50845336)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 憲法 / 議会法 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、「議員の副業・副収入規律の憲法的論点(2・完)―議員の独立性の観点から―」山口経済学雑誌72巻1号83-110頁を公表した(本論攷は、前年度末に公表した論攷「議員の副業・副収入規律の憲法的論点(1)―議員の独立性の観点から―」続編にあたる)。本論攷では、2021年改正後のドイツ連邦議会議員法の規律内容について、制定過程における連邦議会での議論をも踏まえて整理・紹介したうえで、ドイツ連邦憲法裁判所の判例の判断枠組みに照らして、同改正後の規律内容の合憲性を検討している。本論攷は、議員の独立性という観点から、議員に対して及ぼされる規律の合憲性を検討するものであり、議員の権利の憲法的根拠づけを検討する本研究の一環をなしている。 次に、「与党と野党」と題する論攷を、法学館憲法研究所Law Journal第29号120-141頁にて公表した。本論攷では、「与党」・「野党」という概念が日本国憲法のもとで有しうる規範的意義について、日本国憲法における少数派・多数派の位置づけを踏まえつつ、議会における妥協による多数派形成という視座から検討を施した。本論攷の検討によれば、与党・野党という概念が日本国憲法のもとで有しうる規範的含意は、何らかの憲法ランクの法益に関してそれらの概念によって記述される問題状況から、与党・野党の別に着目した議員の別異取扱いの正当性が導かれうるという点にあるということができる。また、本論攷との関係で、「憲法上の与党・野党論の覚書」と題する口頭発表を、北部九州公法若手研究会で行った。これらの論攷・発表は、日本国憲法を前提にしているが、与党・野党という議員の所属が有しうる憲法規範的意義を検討するものであり、また、与党・野党という区分が日独の議会で共通するため、ドイツ連邦議会議員の権利(例えば野党議員の優遇などの可能性)の憲法的根拠を検討する際の比較材料と位置づけられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画において、1年目は、ドイツ連邦議会における議員の諸権利がどのようにして憲法に根拠づけられるかを明らかにすることとされている。この点に関して、ドイツ連邦憲法裁判所の判例(BVerfGE 80, 188; 96, 264; 102, 224; 112,118; 140, 115など)や関連文献を分析・検討することを予定していたが、判例については検討が進んでいる一方で、関連する先行業績の検討にやや手間取っている状況にある。また、年度末に所属研究機関を異動したため、研究拠点の整理・移転といった作業にも時間を割かざるを得なくなった。それゆえに、1年目の研究対象として予定していたテーマについて、真正面から検討する研究成果の公表には至っていない。もっとも、2023年度の研究成果として公表した論攷はそれぞれ、ドイツ連邦議会議員の諸権利の憲法的根拠を検討する一環をなしており、いわば外堀を埋めるかたちで、研究の進展を公表することはできている。以上の理由から、現在までの進捗状況は「やや遅れている」状況にあるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、1年目に予定していたドイツ連邦議会議員の諸権利の憲法的保障の根拠に関する研究を継続する。特に、このテーマに関係する先行業績の読解と整理・検討を行い、研究成果を公表することとしたい。 また、これと並行して、2年目に予定してたドイツ連邦議会議員の議会内部における権利の憲法的保障の射程に関する研究を進める。ここでも、ドイツ連邦憲法裁判所の判例および関連する学説上の議論を整理・分析・検討する。このテーマ(「憲法的保障の射程」)は、1年目に予定していたテーマ(「憲法的保障の根拠」)を前提とし、これと密接に連関するものであることから、1年目のテーマに関する研究成果の公表に続けて、2年目のテーマに関する研究成果も公表することを目指す。 加えて、これらの研究テーマについて通暁するベルリン・フンボルト大学のCh. Waldhoff教授が9月に来日予定となっていることから、同教授へのインタビュー調査も実施することを計画している。
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Causes of Carryover |
2023年度から2024年度にかけて所属研究機関を異動することとなり、研究拠点の移動に伴う時間的需要の増大により、当初参加を予定していた学会等への参加を見合わせるケースが発生した。そのため、主に出張に係る旅費について、計画よりも支出が抑えられることとなり、次年度使用額が生じた。 この次年度使用額と、翌年度分として請求した助成金とを合わせて、ドイツ憲法学・議会法学関連書籍および日本の憲法学・議会法学関連書籍を資料として収集するための物品費・旅費、並びに、国内外の学会・研究会に参加するための旅費として使用することを計画している。
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Research Products
(3 results)