2023 Fiscal Year Research-status Report
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23K12393
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中村 瑞穂 大阪大学, 大学院法学研究科, 准教授 (20807945)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 解除にもとづく原状回復 |
Outline of Annual Research Achievements |
契約にもとづく債務が履行されない場合、債権者には、いくつかの救済手段が認められうる。そのうち、損害賠償と解除とは、とりわけ重要な救済手段となる。もっとも、債権者が、契約を解除したうえで、損害賠償として履行利益賠償を請求しようとする場合には、両者の間の関係が問題となる。履行利益賠償とは、契約が履行されていればあったであろう利益状態を価値(金銭賠償)の形で実現することであるのに対し、解除とは、契約関係を解消することであり、契約がなければあったはずの原状を回復することがその目的とされる。両者は、契約の拘束力との関係において、逆方向の救済手段であるといえる。したがって、両者が同時に主張された場合には、その効果の抵触が問題となりうる。そのような抵触が生じた場合、どのようにして解決されることになるのか。本研究は、このような課題に取り組むものである。 2023年度は、上記の課題についてドイツ法との比較法的検討を行うために、ドイツにおける議論を幅広く調査研究することを行った。 さらに、2023年度には、このような解除と履行利益賠償との関係を明らかにするという課題に取り組むための前提として、解除の法的構成についてどのように考えるべきかという問題にも取り組んだ。解除の法的構成については従来から議論がされているが、その意義についてはあらためて検討する必要がある。そこで、解除の法的構成についての従前の日本の議論を対象とする調査研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、ドイツ法の調査研究を行うとともに、解除の法的構成の問題にも取り組み、論文の執筆作業を進めることができた。同年度中に公表することはできなかったものの、2024年度の前半から連載を開始することができる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
解除の法的構成についての論文を完成させた後、ドイツ法を比較法的検討の対象とし、解除にもとづく原状回復と履行利益賠償との間の効果の抵触についての論文の執筆を行う。現在行っているドイツ法の調査研究と並行しながら、執筆作業を進める。
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Causes of Carryover |
2023年度に予定していた支出額から、3万円強の残額が生じた。この額も含め、2024年度請求額は、同年度に必要な書籍の購入等のために使用する予定である。
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