2023 Fiscal Year Research-status Report
ミゲル・アバンスールのユートピア構想―批判的ユートピアからデモクラシーへ―
Project/Area Number |
23K12417
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
和田 昌也 同志社大学, 研究開発推進機構, 嘱託研究員 (30910088)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | ミゲル・アバンスール |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ミゲル・アバンスールの「ユートピア」概念を捉えるべく、例えば雑誌Texturesに投稿された「ユートピアの歴史とその批判の運命」(1973-1974年)やLibreに投稿された「夢見るマスター」(1978年)などの70年代の初期の代表的諸論稿を中心に検討を重ねてきた。そこでは特に、かれが提起した「社会主義的ユートピア」、「新ユートピア主義」、「新たなユートピア精神」という三つのユートピア概念の発展段階を画する諸概念の定義と相互の内的連関について集中的に考察を行った。 この研究を通じて、次年度、政治思想学会第31回大会自由論題報告の場にて、「デモクラシーとユートピア―ミゲル・アバンスールの視座から―」(2024年5月)と題したひとつのユートピア論を生み出すことができた。アバンスールのユートピア論から晩年のデモクラシー論の構想へと至る思想形成過程を明らかにする本研究課題に照らせば、この研究報告の内容は一種の包括的位置づけにあると言うことができるようなものであるが、実際、アバンスールがなぜユートピア論をデモクラシーの構想へと接続しなければならなかったか、その大筋を明らかにすることができたと考えている。 その他の研究としては、アバンスール自身が「新しいユートピア精神」の名の下で取り組んだヴォルター・ベンヤミンの『パサージュ論』と「歴史の概念について」について、彼の再解釈の意義と可能性を、そのテクストに照らしながら、つぶさに検討を重ねた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の遂行状況としては、「おおむね順調に進展している」と評価することができる。実際、初年度に予定していた初期の論稿の検討と並行して、本研究課題の大筋を描くことができたことがその理由として挙げられる。次年度以降、この研究を踏まえて、より詳細に考察を展開することができると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策としては、まず、次年度の政治思想学会における口頭発表「デモクラシーとユートピア―ミゲル・アバンスールの視座から―」を、その際の質疑を踏まえて、論文へと仕上げることで、最初の成果として公表したい。 その後は、彼の初期のユートピア概念についての精緻な読解を進めていきたい。
|
Causes of Carryover |
当初予定していたフランスでの資料収集が一年延期をし、そのための予備研究を優先させたために、次年度使用額が生じた。その分は、次年度に延期したフランスでの資料収集を行 う費用に充て、当初、当該年度分として割り当てていた研究費に関しては、入手した資料の分析と考察を学会発表、論文投稿のために予定通り割り当てることとする。
|