2023 Fiscal Year Research-status Report
Research on Territorial Autonomy as an Institutional Solution after Secession Conflict
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23K12434
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Research Institution | Miyazaki Municipal University |
Principal Investigator |
谷口 美代子 宮崎公立大学, 人文学部, 教授 (50967213)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 分離独立紛争 / 領域自治 / 平和構築 / 民族自決 / 領土保全原則 / 非国家主体の政治的正統性 / 紛争解決 / フィリピン・ミンダナオ |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である2023年度は、世界各地における分離独立紛争後の領域的自治に関連する文献調査、研究機関が公開している領域的自治の基礎情報や和平合意の条項・履行状況に関連するデータ・ベースをもとに、その有効性の規定要因(変数)の特定、関係者へのオンライン・対面での面談調査の実施、比較研究を実施するための分析枠組みの構築、先行研究の批判的考察を行ったうえで、これらをもとにした論文執筆と国内外での学会発表を行った。具体的な成果は以下のとおりである。
1)比較研究の分析枠組みの規定要因として、①国・地域の社会経済文化的要因、②分離独立紛争・和平プロセス(紛争要因、和平合意の構成要素・和平プロセス・履行状況)、③自治(法制度と政治体制、財源、政府(中央―地方)間・地方間・集団間関係、移行、権力分有)、④外部要因(国際・地域の治安・政治情勢、国際社会の支援・対応など)、⑤①~④を踏まえた「有効性」の規定要因と入手可能な指標を仮に特定した。 2)そのうち、対象事例のひとつであるフィリピン南部のミンダナオについて、異なる武装勢力のもとでの領域的自治について、上記の分析枠組みを用いて検証した。現在、2019年に和平の産物として設立されたバンサモロ暫定自治政府のもとで実施された2022年の領域内での選挙の結果、領域的自治内部での主要勢力間の権力闘争が顕在化したことからも、これらを分析枠組みの変数として含める必要性が明らかとなり、その結果を踏まえて修正した。 3)本研究を国際レベルで発展させるために、国際学術誌である「Frontier in Political Science」にて、「領域的自治:非国家主体の政治的正統性」と題した特集号の編集者として、テーマ設定を行い、本研究をとおして得られた知見を活用し、人道的危機の深刻度が高いパレスティナを含む横断的分析のための調査設計を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、本年度(初年度)に現地調査を実施する予定だったが、研究効率を高めるために、文献調査(先行研究レビュー)と既存データ・ベースの解析、オンラインや対面での面談調査などにより、理論と事例の両側面から課題の特定と議論の精緻化のための分析枠組みの構築に注力した。こうした研究過程を通じての成果は、学術論文2本、学会発表1本、書籍(分担執筆)1本である。さらに、これまでの人的ネットワークを活用し、来年度からの数カ国に及ぶ現地調査のための準備を進めた。こうした成果をもとに、次年度から本格化する現地調査や事例研究からの比較研究への展開のための基盤整備ができたと考える。 なお、本年度の研究成果として予定していた、国際学会(International Studies Association)(2024年4月初旬)での発表が体調不良により直前で中止となった。その結果、同内容をさらに精緻化した研究成果を次回(2025年3月)の同学会を含めた国内外での学会で報告する予定である。 以上から、全体としておおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(2023年度)は、前年度の研究成果に基づき、引き続き、理論・事例両面からの先行研究レビューを継続しながら、現地調査による事例研究を実施し、分析枠組みの修正や事例研究から比較研究への横断的分析を行う予定である。 事例研究のひとつとして対象としているフィリピン南部に位置するミンダナオでは、2025年に選挙をもって分離独立勢力主導の暫定自治政府の移行期間が終了予定である。そのため、現在の国際・地域の安全保障情勢およびフィリピン国内の政治情勢の変動とあいまって、同地域で不安定性が高まることが予想される。こうした和平のモメンタム(和平合意履行の最終段階)をとらえ、引き続き、現地動向を踏まえて現状を分析し、他の事例研究の分析結果をもとに、仮設定した分析枠組みに修正を加えながら、その精緻化、さらには「有効性」の多義的概念の検討を進める。 以上の研究成果をもとに、公刊予定の英文書籍と英文査読誌の投稿論文の執筆を本格化する。その部分的成果は、来年度、すでに採択されている、国際関係学会(International Studies Association)、国際政治学会(International Political Science Association)などで発表し、そこで得たコメントをもとに学術書・論文の執筆に活かす。
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Causes of Carryover |
当初、本年度に現地調査を実施する予定だったが、研究効率を高めるために、本年度は文献調査とオンライン・(国内)対面での面談調査を実施することとした。調査全体の研究成果には遅延は生じておらず、その成果を活用して、2024年度に前年度残額分を使用して、現地調査を実施する予定である。
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