2023 Fiscal Year Research-status Report
クリントン政権の経済安全保障政策に関する政治外交史的研究
Project/Area Number |
23K12435
|
Research Institution | Meio University |
Principal Investigator |
志田 淳二郎 名桜大学, 国際学部, 准教授 (90782318)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | ウィリアム・クリントン政権 / 経済安全保障 / 大量破壊兵器 / 経済制裁 / 米露関係 / 米中関係 / 日米関係 / ハイブリッド戦争 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ウィリアム・クリントン政権(1993~2001年)の経済安全保障政策の実態を、同政権の経済安全保障に関連したアメリカ国内政治と国際関係における諸事例の分析を行い解明することである。冷戦終結とグローバリゼーションの進展によりクリントン政権は「経済安全保障」への関心を高め、1993年、ホワイトハウスに国家経済会議(NEC)を設置するなど制度改革を行った。1990年代のアメリカにおけるこうした動きは、近年、「経済安全保障」への関心を高め、法整備や制度改革を行っている日本にとっても示唆に富んでいるのではないか。こうした問題意識から上記の研究目的を設定した。 研究初年度にあたる2023年度は、まず基礎作業として、クリントン政権期の政治外交過程に関する二次資料の収集・解析作業と主としてオンラインをベースとした一次資料の収集・整理を行った。これら一次・二次資料の収集・データベース・解析作業を通し、暫定的仮説ではあるが、以下のことが分かった。クリントン政権の「経済安全保障」への関心の高まりは1992年の大統領選挙に遡ることができることである。1992年の大統領選挙において、クリントンは、外交・安全保障政策の実績で優位に立つ現職のジョージ・H・W・ブッシュ大統領に対抗する観点から、「経済」に注目し国民の幅広い支持を獲得しようとした。そして冷戦後の国際秩序の構築に「安全保障」の観点から関与する姿勢を示しつつも、国民の生活やアメリカの経済や産業、科学技術力の優位性を確保することも追求したため「経済安全保障」に関心を寄せることとなった。 これらのことを歴史的に解明しつつ、安全保障の新領域理論(例:ハイブリッド戦争)の研究も行い、これらの新領域課題に「経済安全保障」がどのように対応できるかについても明らかにする作業を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度にあたる2023年度は、限られた時間や資料的制約はあったものの、おおむね順調に研究活動を遂行することができた。その理由として、第一に、公刊されている二次資料が充実していることがある。ウィリアム・クリントン政権期の政治外交過程に関する二次資料は豊富に公刊されていることが研究を遂行する上で有益であった。また、現在、日本で出版の進む「経済安全保障」に関連する書籍・論文が多く公表されていることも有益であった。これらの文献が、過去のアメリカの経済安全保障政策の実践過程に注目していないこともあり、本研究を遂行する意義を改めて感じることができた。第二に、クリントン大統領図書館による未公刊一次資料のオンライン上での公表体制が充実していることも挙げられる。これらの未公刊一次資料は、先述の二次資料と合わせて、クリントン政権の経済安全保障政策の実態に迫る上で重要なものである。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、現時点で以下を考えている。第一に、上記のクリントン政権が「経済安全保障」に関心を寄せるようになった背景に関する仮説を実証するための資料収集・データベース化・解析作業を継続的に行うことである。これに加えて、クリントン政権が設置したNECが大量破壊兵器の不拡散や経済制裁、貿易・通商摩擦への対応などの諸政策を形成・遂行する際に、どのような機能を担ったかについて、事例研究を行っていきたい。そのためには、クリントン大統領図書館の未公刊一次資料のみならず、アメリカ機密指定解除文書データベースを本務校図書館に導入するなどして、当時の経済安全保障に関するテーマやイシューについての資料をまんべんなく収集していく予定である。 ある程度の資料収集・データベース化・解析作業が進んだら、学術論文を執筆するなどして研究成果物の公表に着手することを検討している。
|
Causes of Carryover |
研究初年度にあたる2023年度は主に公刊資料の収集・解析作業を中心に行ったため、配当されている使用額全額を細かく使いきることができなかった。今回発生した次年度使用額については、引き続き公刊資料の収集作業や新たなデータベース導入等のために活用することを予定している。
|