2023 Fiscal Year Research-status Report
18世紀から19世紀前半のザクセン繊維産業における産業振興政策の研究
Project/Area Number |
23K12512
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Research Institution | Chuogakuin University |
Principal Investigator |
掘井 誠史 中央学院大学, 商学部, 講師 (40907979)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 産業振興政策 / 政府紙幣 / 技術教育 / 懸賞課題 / ドイツ経済史 / ザクセン経済史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の核心をなす学術的「問い」である,懸賞課題・報奨金・メダル授与という複数の産業振興政策の実施を通じ,18世紀後半から19世紀前半ザクセン繊維産業の技術・品質改良がどのようにして達成されたのかという点について検討するにあたり,予備的検討として予算編成について調査した(本来は令和7年度以降に実施する内容であった)。そのなかで,これらの産業振興政策の実施にあたって,戦後復興や飢饉による予算的制約が存在していることが判明した。ザクセン政府は予算確保のために新紙幣を発行し,それが産業振興政策の実施に決定的な重要性を持つ可能性があることがわかった。そこで申請書における研究予定の順序を変更し,新紙幣についての研究を進めた。その成果は社会経済史学会九州部会において「18世紀後半ドイツ・ザクセンにおける 新紙幣kurfurstlich sachsischen Kassenbilletsの 発行・受領・流通」という題目で報告した。また,その内容の一部を「ザクセン選帝侯フリードリヒ・アウグスト 3 世治世下における紙幣 kurfurstlich sachsischen Kassenbilletsの発行」というタイトルで紀要論文として発表した。この論文では,政府紙幣のKassenbillet が、七年戦争後の財政・経済危機への対応を企図しており、財政状況改善のための方策の1つとして発行されたことを指摘している。また現在,国際査読誌に,この新紙幣と産業振興政策の関係についての論文を投稿中である。また,並行して本来の令和5年度の研究計画である懸賞課題・メダル・報奨金の比較検討についても史料調査を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究を進める中で,産業振興政策を財政的に支える政府紙幣の存在を示し,それについて紀要論文を発表した。また更なる史料調査に基づいて,政府紙幣と産業振興政策の関係を示す論文を投稿できている。また,並行して本来の令和5年度の研究計画である懸賞課題・メダル・報奨金の比較検討についても史料調査を進めることができている。こちらについては令和6年度中に投稿・論文化を目指している。
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Strategy for Future Research Activity |
政府紙幣と産業振興政策の関係を示す論文の査読結果をまち,その論文の改訂を進める。懸賞課題・メダル・報奨金の史料調査に基づく比較検討をした結果を論文化する。
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Causes of Carryover |
国際査読誌のOAのための費用を確保していたが,査読が長引いたため使用に至らなかった。繰り越した金額については,論文化されるに至ればOAのための費用として計上する予定である。
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