2023 Fiscal Year Research-status Report
移民の子どもの教育達成に向けた親の役割とそのサポートに関する国際比較研究
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23K12595
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐々木 優香 筑波大学, 人文社会系, 研究員 (60907799)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 移民の子ども / 教育支援 / 親へのサポート / ドイツ / 日本 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、移民の子どもの教育達成にむけて、親の役割や親が直面している課題を明らかにし、必要とされる親への支援について検討することを目的としている。そのため初年度は、移民家庭が抱える子どもの教育をめぐる課題について、その実態把握を行った。具体的には、移民の子どもの教育的課題や移民第二世代に関連する先行研究に基づく文献調査と、以前に実施していた茨城県内地域での事前調査の結果を分析した。とくにアンケート調査の結果からは、言語能力に起因する親子間コミュニケーションの課題が浮き彫りとなった。すなわち、親が十分な日本語能力を身につけておらず、かつ子どもが親の母語を用いて学校に関連する話をすることができない場合、親子の共通する言語がないため、学校に関わる会話が十分に行われないという問題がある。 こうした実態を踏まえ、本年度は親子の共通言語習得の面に焦点をあて、母語・継承語教育のあり方について、出自言語授業が展開されるドイツの事例研究に注力した。具体的には、ドイツの公立学校における出自言語授業の導入とその発展経緯、そして存続をめぐる議論について、学校教育省や関連団体および州議会報告をもとに整理した。くわえて、近年ドイツ社会でスローガンとなっている「承認の文化」の下、文化や言語の多様性がいかにドイツ社会で承認され得るのか、公立学校での出自言語能力の評価や他教科との連携に注目した。これらの調査から明らかとなった点について、2023年12月に開催された移民政策学会にて研究報告を行った。 今後は、先述したアンケート調査にくわえ、インタビュー調査を取り入れながら、実態をより正確に把握したうえで、子どもの教育と、移民の親の学歴や言語能力、就労状況、滞在期間、帰国意識、エスニック・コミュニティとの関わり合いについて検討をくわえたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初2年目に計画していた学会発表を行うことができたため。そのうちの1つは、日本におけるブラジル人家庭の親子間コミュニケーションに関するテーマについて、国際学会で報告し各国の異なる専門家から、多様な視点で示唆に富むアドバイスを得ることができた。 一方、調査においては、協力を得られる学校の数を増やすことに苦戦しているため、学校に限らず、教育団体やボランティア団体にアクセスしながら、インタビュー調査の実施へと繋げることで、今後も計画通りに研究を進められると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
「移民の親が直面する情報獲得の壁」という課題に対して、親の在留資格、就労状況、帰国予定、教育歴、子どもの教育に対する意識などの、さまざまな変数について調査を通じて明らかにしたい。また、ホスト社会側の視点からも、教育関係者に対する聞き取り調査を実施する予定である。 つづいて、引き続き国際比較の視点から、ドイツで取り組まれている親を対象とする支援について情報収集を行い、来年度予定している海外調査の準備を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
3月に中国で研究会が開催される予定であり、そこで研究報告をするつもりであったが、研究会の開催自体が先送りとなった。そのため、旅費として支出予定であった金額を文献収集や現地調査の旅費として使用したい。
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