2023 Fiscal Year Research-status Report
世帯構成・家事の外部化・家事関連機器と家事労働:家事労働研究の理論枠組みの刷新
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23K12610
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
柳下 実 佛教大学, 社会学部, 講師 (00963604)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | 家事労働 / ジェンダー / 生活時間 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は従来の家事労働研究では分析対象とされにくかった未婚者の家事について検討した.結果から,未婚男女の家事遂行は近年のコーホートになるにつれ,男女差が縮小していることが明らかになった.未婚女性は家事を減らし,未婚男性は家事を増やしている.一方で,未婚女性が20代後半で家事に費やす時間が男性よりも有意に長くなる傾向が明らかになった.従来の研究では,既婚者の家事分担について既婚者内部の情報を用いて分析してきたが,今後は未婚時の家事遂行と既婚時の家事遂行の関連を検討する必要性が示唆された. また,家事を検討する上で重要な家事項目への回答傾向についても分析した.パネル調査では,調査年によって項目を入れ替えることがある.そのため,家事項目の並び方によって家事頻度の回答傾向が異なるのかを検討した.結果から,家事時間項目が直前にあった場合,家事頻度項目への回答がとくに家事頻度が低い集団で高いことが明らかになった.家事は行動についての項目であり,態度ではないため,項目の順序効果の影響は少ないと考えられるが,家事労働を検討する上でも,どのように調査するのかが影響することが明らかになった. 加えて、分析途中ではあるものの、大規模データを利用した妻の収入と家事分担との関連の分析からは、妻の収入と家事分担との関連が近年強まっており,特に近年の結婚コーホートでアメリカの議論で想定されるような関連を持ったことが明らかになった。これは翻っていえば、以前のコーホートでは仮説で想定される関連がみられなかったことを示しており、家事労働のモデルについてさらに検討する必要があることを示唆する結果である. また,研究に必要なデータの入手にも着手した.種々の理由により本申請には至らなかったものの,社会生活基本調査の調査票情報の利用や家庭動向調査の利用について検討し,現在申請を準備している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査票情報の磁気媒体での利用が初めてであるため,一番の懸念点であったが,磁気媒体で利用したことがある研究者などに相談することで,来年度に本申請することができ,利用開始できると考えている.また,他の大規模データを用いた分析も本研究と関連して行うことができており,おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、データの入手が第一である.また、それに加えて、家事労働を量的に分析する際に、どのように捉えるのが好ましいのかを理論的に検討する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度はおもにデータの入手や、家事労働の理論的研究の検討をおこなったため、当該助成金が生じた。来年度やそれ以降には、より具体的な検討に入るため、そちらで執行する。
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