2023 Fiscal Year Research-status Report
粘膜防御因子としての小腸型アルカリホスファターゼの利用に関する検討
Project/Area Number |
23K12689
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Research Institution | Jumonji University |
Principal Investigator |
中岡 加奈絵 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 講師 (50880580)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | 小腸型アルカリホスファターゼ / 食物アレルギー / ラット |
Outline of Annual Research Achievements |
アルカリホスファターゼ(ALP)のアイソザイムのうち、小腸型アルカリホスファターゼ(IAP)には粘膜防御因子としての作用があり、消化管由来の全身性炎症を予防していることが推察されている。そこで本研究は、腸の炎症が関連する病態のうち、栄養管理を要し、該当者数の多い食物アレルギーならびに閉経後肥満に焦点を当て、QOL向上や健康寿命の延伸に寄与できるIAPの有効性や応用利用についてのエビデンスを得ることを目的として実施している。
本年度の研究では、IAP経口投与による食物アレルギーの発症予防に対する効果を検証した。アレルギー素因を有するBrown Norwayラット(5週齢)をコントロール群、オボアルブミンの経口投与によりアレルギー症状を誘発する群、オボアルブミンと同時にIAPを経口投与する群の3群に分け、28日間飼育した。その結果、アレルギー症状を誘発した群では、小腸組織における腸粘膜の萎縮や離脱が確認されたが、アレルギー症状を誘発した際にIAPを経口投与した群では、それらが抑制されていることが確認できた。小腸ならびに大腸各部位でのALP活性を確認したところ、結腸において、アレルギー症状を誘発した際にIAPを経口投与した群では、アレルギー症状を誘発した群と比較し有意に高値となることが示された。IAP経口投与による食物アレルギーの発症メカニズムとして、腸管バリア機能の向上が関わっているという仮説を検証すべく、血清IgAレベルを検討したところ、アレルギー症状を誘発した際にIAPを経口投与した群では、アレルギー症状を誘発した群と比較し有意に低値となることが示された。これらの結果から、IAPの経口投与により、腸管バリア機能が高まり、食物アレルギーの発症予防につながる可能性が推察された。得られた結果は、食物アレルギー発症予防のメカニズム解明の一助になることが期待された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り動物飼育を行い、解析の実験を進めることができているため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はIAP経口投与による食物アレルギーの発症予防に対する効果の検証を行ったが、来年度はIAP経口投与による食物アレルギーの症状改善に対する効果の検証を行い、IAPを活用した食物アレルギー対策に関する研究をさらに進展させる予定である。また、本年度得た試料について、メカニズム解析につながる測定を引き続き行う予定である。
IAPと食物アレルギーとの関連について検討をひと通り実施した後は、当初の予定に含めていた通り、IAPと閉経後肥満との関連について検討する。その後は、腸管のIAPレベルを上昇させるのに効果的な食餌性因子の検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
おおむね予算通り執行できたが、少額の残額が発生した。この残額は、次年度使用する試薬購入時に使用する。
次年度は、アレルギー素因を有するBrown Norwayラットを用い、オボアルブミン経口投与による食物アレルギー誘発ラットに対し、IAPを経口投与し、IAP経口投与による食物アレルギーの症状改善に対する効果を検証する。そこで、実験動物や、経口投与するオボアルブミンやIAPの試薬を購入する予定である。また、アレルギー症状の確認のために必要な試薬(IgE測定キット、IL-13やIL-4の測定キット)や、IAP経口投与によるアレルギー症状緩和のメカニズム解析に必要な試薬(ZonulinやZO-1の測定キット、IgA測定キット)、ALP活性素空挺に必要な試薬(ALP測定キット、たんぱく質測定キット)を購入予定である。
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