2023 Fiscal Year Research-status Report
戦後教育労働運動における教師の聖職者性と労働者性の相克と統一
Project/Area Number |
23K12725
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
桑嶋 晋平 日本女子大学, 人間社会学部, 准教授 (20909254)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 教育労働運動 / 教師の聖職者性 / 教師の労働者性 / 日本教職員組合 / 国民教育研究所 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、1950年代半ばから1970年代にかけての教育労働運動において、教師の聖職者性と労働者性の相克と統一および、献身的な教師と労働者としての教師との分断という問題への対応・調停がいかに模索されたのかをあきらかにすることを目的としている。具体的には、日本教職員組合、国民教育研究所関連の史資料、関係者の私文書の収集・整理とその分析によって遂行される。本研究課題においては、①1950年代半ば~1960年代初頭、②1960年代、③1970年代の3つの時期区分を設定した。実施初年度にあたる本年度は、①と②の時期、すなわち、1950年代~1960年代にかけての史資料の調査、収集、分析をおこなうことを予定していた。 計画に基づき、本年度は、(1)教育労働運動における教師像・教師論をめぐる史資料の収集・整理をおこない、その分析をすすめた。具体的には、日本教職員組合の史資料および国民教育研究所の史資料を収集し整理をおこなった。とくに、国民教育研究所においては、設立当初から教師の意識調査が実施されており、内部で教師の意識をめぐって相当議論が積み重ねられていたことが判明した。(2)教師像・教師論における聖職性や献身性を背後から規定する思想や歴史的社会的条件をあきらかにするため、戦後の教育における誠実・正直という徳の位置づけを跡付けた。(3)史資料調査をすすめるなかで、山形県における教育労働運動が果たした役割が重要であると判明したことから、山形県における教育労働運動の史資料調査と分析をすすめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)史資料調査:1950年代から1960年代にかけての教育労働運動における教師の聖職者性と労働者性をめぐる議論や言説にかんする史資料の収集・整理を順次すすめており、一定以上収集できている。ただし、本年度の調査のなかで、山形県における教育労働運動が、教師の聖職者性と労働者性との相克を歴史的に解明していくうえで重要な位置にあることが判明し、山形県の教育労働運動にかんする史資料調査をすすめはじめている。そのため、当初本年度で完了する予定であった史資料調査が、次年度まで及ぶこととなった。 (2)史資料の分析:史資料の分析を順次すすめるとともに、分析枠組みや、その背景についての研究をすすめている。本年度は、(1)の調査で収集した史資料の分析をすすめるとともに、教師像・教師論における聖職性や献身性を背後から規定する思想や歴史的社会的条件をあきらかにするため、戦後の教育における誠実・正直という徳の位置づけを跡付け、論文化し研究成果として公表した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)史資料調査:次年度以降も、継続して史資料調査を実施する。とくに、山形県の教育労働運動関連の史資料については、初年度に十分収集することができなかったため、2年目に複数回調査を実施し、収集を完了させる予定である。 (2)研究成果の公表:初年度は、教師像・教師論における聖職性や献身性を背後から規定する思想や歴史的社会的条件をあきらかにするための論文を執筆し、研究成果を公表した。次年度以降は、収集した史資料をもとに、学会報告や、学会誌、紀要などに順次研究成果を公表していく予定である。
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Causes of Carryover |
本年度、次年度使用額が生じた理由は、以下である。 (1)学会の旅費:学会がオンライン開催であったことから、当初予定していた旅費を執行せずに済んだこと (2)異動にともなう調査費用の軽減:申請時の居住地(熊本県)から現在の居住地(東京都)に異動したため、調査にかかわる費用がおさえられた。 以上から次年度使用額が生じたが、初年度の調査のなかで、山形県の教育労働運動の位置づけが重要であることが判明したため、次年度以降は、山形県での調査を複数回実施する必要がある。次年度使用額は、主にこの調査費用にあてる予定である。
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