2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of a reflection model for childcare and education based on visual narratives
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23K12752
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
横山 草介 東京都市大学, 人間科学部, 准教授 (60803484)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | ヴィジュアル・ナラティヴ / ナラティヴ / 質的研究 / 保育の質 / 保育実践 / 教育実践 / 保育者 / リフレクション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、保育や教育の実践のリフレクション過程に実践者自身による描画や写真、映像といった視覚的な媒体を導入することの意義と効果を理論的、実践的に明らかにしていくことにある。これらの解明を経て、言語のみに依拠した実践のリフレクションとは質の異なる実践のリフレクションについての視座を提供することを目指す。 初年度の研究計画においては、リフレクション過程に視覚的な媒体を導入することの意義についての理論的な検討を目的として行った。保育や教育のリフレクションに関する従来研究においても、実践の省察にビデオカメラやカメラを用いて撮影された視覚的な媒体が活用されることはあった。一方で、これらの視覚的な媒体は過去の実践を想起するための媒体として位置づけられる傾向が強かった。だが、実践のリフレクション過程に視覚的な媒体を持ち込むことの意義は実践の想起に限られない。本研究の第1段階では、(1)実践のリフレクション過程に視覚的な媒体を導入することが実践のリフレクションに与える影響は何か。また、(2)描画、写真、映像といった視覚的な媒体の違いによってリフレクションの内容に違いは生じ得るのか、といった問いについて理論的な検討を行うことを目的とした。その結果、実践のリフレクション過程に視覚的な媒体を導入することは実践のリフレクション過程を多義的なプロセスにし得ること、視覚的な媒体の違いはリフレクションの担い手のリフレクションの対象に制約や方向づけを与えることが示唆された。これらの理論的な検討の成果は、2023年5月に催された日本保育学会第76回大会、同年11月に催された日本質的心理学会第20回大会、2024年3月に催された日本発達心理学会第35回大会において発表を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度の研究計画においては、実践のリフレクション過程に視覚的な媒体を導入することの意義に関する理論的な検討を目的として行うことにあった。以上の研究計画に照らし、当該年度の研究成果として以下の2点をあげることができる。 (1)実践のリフレクション過程に視覚的な媒体を導入することの意義に関する理論的な検討の成果を、2023年5月に催された日本保育学会第76回大会、同年11月に催された日本質的心理学会第20回大会、2024年3月に催された日本発達心理学会第35回大会において発表した。 (2)研究協力を得ている保育所においてフィールド調査を実施し、研究の基礎データを収集するとともに得られた研究データをもとに理論的な検討を進めた。 ヴィジュアル・ナラティヴの方法論を用いた保育・教育のリフレクションモデルの開発という研究目的に照らし、当該年度はリフレクションモデルの基盤となる理論的な探究を進めるとともに、その研究成果を学会、学術誌を通して発表することができた。以上の研究成果に基づき、本研究は当初の研究計画に照らしておおむね順調に進展しているものとの評価することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の研究計画においては、ヴィジュアル・ナラティヴの方法論を用いた保育・教育のリフレクション手法の開発に着手する。研究協力を得ている保育所においてフィールド調査を実施し、研究の基礎データを収集するとともに得られた研究データの分析を進める。研究初年度の研究成果に基づけば、(1)実践のリフレクション過程に視覚的な媒体を導入することは実践のリフレクション過程を多義的なプロセスにし得ること、(2)視覚的な媒体の違いはリフレクションの担い手のリフレクションの対象に制約や方向づけを与えることが示唆されている。これらの知見を踏まえつつ、ヴィジュアル・ナラティヴの方法論を用いた保育・教育実践のリフレクション手法の開発に着手する。
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Causes of Carryover |
オンラインによる開催とする学会が増加傾向にあり、学会参加に伴う出張旅費支出が当初の計画に比して低く抑えられた。このため、出張旅費支出において次年度使用額が生じている。同費用については、次年度の研究計画において学会参加、研究出張に伴う旅費として使用予定である。 また、当初の研究計画に計上した「物品費」に関わる支出の一部については、初年度の研究遂行が文献調査を主とする基礎調査の段階に留まったため、研究計画における支出の時期に留保を要した。このため、「物品費」に関わる支出について次年度使用額が生じることとなった。同費用については次年度の研究計画における研究の進捗に照らし、「物品費」に関わる支出として使用予定である。
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