2023 Fiscal Year Research-status Report
社会的弱者(Vulnerable People)となりうる人々は歴史を学ぶ意味を何に求めるのか
Project/Area Number |
23K12792
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Research Institution | National Institute of Special Needs Education |
Principal Investigator |
鈩 悠介 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所, 西日本ブランチ広島オフィス, 研究補佐員 (40963492)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | 社会的弱者 / 社会参加 / 市民性教育 / 歴史教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、歴史的意義についての思考を、より「語りづらい」人々へと拡張することを目指す。実行可能性や倫理的困難さを考慮し、1年目は文献レビューを通した研究デザインの設定を主な課題とした。 最も重要な課題は、「社会的弱者」という概念によって提示されるインタビュー対象者を本当にインタビューすべきかという点である。この点については、文献収集や共同発表を通じて検討を進めた。 現段階で以下の知見を得ている。第一に、研究の倫理的問題である。社会的弱者へのインタビューが持つ暴力性は周知の事実だが、体系的レビュー研究(Alexander, Pillay, Smith, 2018)によれば、社会的弱者に対する研究が進展しないことによる問題にも自覚的である必要があると示唆された。 第二に、研究対象についてである。例えば、定型発達とは異なる人々へのインタビューについての議論を歴史教育や関連領域の観点から収集した。その結果、定型発達の人々の想像力の限界性について指摘する論考が表れていることを確認した(野尻, 2023)。 第三に、研究方法についての考察である。これまでの歴史的意義の思考についての大部分の研究のように自国の歴史学習をある程度終えた子どもではない人々をどう調査するかについて検討を加えた。その結果,未就学児含めた幼少期の子どもに関する調査を行ったHauver(2019)など本研究課題に有益な示唆を与える研究を発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は研究デザインについて検討を加えることを主眼に置いた。1年目では調査の実現可能性の高い対象者について議論し選定を行うことを計画していたが,研究代表者の所属変更に伴い,アクセス可能性の高い対象者が様変わりしたため,上記のような進捗状況と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究についての倫理的配慮と実行可能性についての検討は引き続き行う必要がある。本研究に関連するテーマを研究する研究者が社会科教育内外で発表を続けているため、研究ネットワークを広げることが今後のキーとなると予想される。
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Causes of Carryover |
当初は調査対象校等を選定した上で何度か実地調査を行う予定であったが,インタビュー対象者の想定が大きく変わる可能性を予期したため,この調査を次年度に持ち越すことに決めた。
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