2023 Fiscal Year Research-status Report
An examination of the phenomenon where grateful beneficiaries sacrifice others for the sake of their benefactors
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23K12862
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
山本 晶友 上智大学, 総合人間科学部, 研究員 (30908851)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 感謝 / 第三者犠牲 / 対人関係 / 衝動性 / 未来の他者 / 道徳性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,感謝の体験者が感謝対象者のための第三者犠牲を受け入れやすくなる現象(感謝による第三者犠牲)の確認と,その現象が起こりやすくなる要件を調べることである。初年度は,現象の確認と起こりやすい要件を同時に調べられる場面想定型実験を3件行った。これらの手法は個々の検討の実施コストが少ないため,統計学的な偽陰性の確率を十分抑えた検討を多様に実施しやすいため重要である。 1件目は,感謝の対象者との関係性がまだ親密でない場合の方が既に親密な場合よりも,感謝による第三者犠牲が生じやすいと予測し,実在の知人や友人から親切にされて感謝を感じる場面を想像させる実験を行った。その結果,そもそも感謝による第三者犠牲を表す条件間の差がみられなかった。2件目は,感謝による第三者犠牲は感謝体験者の衝動性が高い場合ほど起こりやすいと予測し,衝動性の様々な側面を測定できる尺度への回答と,職場の同僚から親切を受け感謝を感じる場面を想像させる実験を行った。その結果,感謝による第三者犠牲がみられたものの,その現象の生じやすさは衝動性のどの側面とも関連がみられなかった。3件目は,感謝による第三者犠牲は,第三者が遠い将来の他者である場合ほど起こりやすいと予測し,職場の同僚から親切を受け感謝を感じる場面を想像させる実験に,犠牲となる第三者が現代,40年後,100年後のいずれかとする操作を加えた。その結果,感謝による第三者犠牲に加え,第三者が遠い将来の他者であるほど犠牲にされやすくなる傾向がみられたものの,第三者がいつの時代の人物か次第で感謝による第三者犠牲の生じやすさが変わることを直接示す結果は得られなかった。 回答者が感謝対象者として想定する人物像が,1件目のように多様すぎる手法よりも,2,3件目のように一意的である手法の方が,感謝による第三者犠牲が観測されやすいと確認できた点に意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下二点の理由から,概ね順調に進展しているといえる。第一に,過去の研究で見られた,感謝体験者が感謝対象者のために第三者を犠牲にする現象の再現性を確認できていることである。第二に,感謝体験者の特性(衝動性),感謝対象者との関係性(親密さ),第三者の特性(将来的な遠さ)という,互いに異なる多様な観点からの検討を重ねることができていることである。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は多様な観点からの検討を重ねたものの,感謝体験者が感謝対象者のために第三者を犠牲にする現象がどんな要件で生じやすいのかを直接示す知見を得るには至っていない。今後はこの直接的な知見を得られるまで,統計学的な偽陰性の確率を十分抑えられる場面想定型の実験で検討を続ける予定である。この手法で要件の特定に至れた後に,実際に第三者犠牲を払うかを問われる行動実験を実施して再確認する。
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Causes of Carryover |
当初計画していた,行動実験と場面想定実験を平行で実施する方針ではなく,複数の場面想定型実験を先に実施してからその中で特定できた効果を行動実験で確認するという方針に変更したことにより,行動実験でサンプルサイズ確保に必要な謝金の拠出が初年度に発生しなくなったため。使用計画としては,場面想定型実験で有意な調整要因を特定した後に行動実験の実施費用として拠出する予定である。また,初年度の研究の成果公開のための出張旅費や英文校正費用にも拠出する予定である。
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