2023 Fiscal Year Research-status Report
自閉スペクトラム症特性をもつ理系学生の創造性発揮の要因に関する統合モデルの構築
Project/Area Number |
23K12914
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
田附 紘平 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 准教授 (90804336)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 理系研究者 / 理系大学院生 / 創造性 / ASD特性 / 心理検査 / ロールシャッハ法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,心理検査バッテリーとインタビューを通して,我が国のASD特性をもつ理系学生による創造性発揮の個人内要因および環境要因を明らかにし,それについての統合モデルを構築することを目的としている。2023年度では,最新の知見も含めて先行研究のレビューを行い,研究計画を修正した上で,調査を実施した。具体的には,研究領域に即した創造性を検討する必要があること,物理工学系を専門とする研究者・大学院生の創造性に関する知見があること,数理系を専門とする研究者・大学院生の創造性についてはこれまで明らかになっていないことから,特に数理系を専門とする理系研究者・大学院生の創造性に焦点を当てることにした。そして,数理を専門とする優れた理系研究者1名を対象とした4回の調査を行ったことに加え,対照群として一般大学生51名にロールシャッハ法に関する調査を実施した。その結果,数理を専門とする理系研究者の創造性は,言語能力・視覚情報処理能力・短期記憶力の高さ,常識から離れた物の捉え方をすること,自身の見方に対して頻繁に吟味をしていること,客観的には恣意的と思える組み合わせにもとづいて物事を認知していることに裏打ちされている可能性が示唆された。また,大学生を対象とした調査からは,ロールシャッハ法の標準化時と比較して,現代大学生の一般的な見方が異なる可能性,現代大学生の現実検討力が低い可能性,情緒刺激に対する動揺が小さい可能性が指摘された。さらに,思考・言語カテゴリーの分布も得ることができたため,今後,これらの指標に関して理系大学院生の結果と比較することで,本研究目的に沿った有益が知見を得ることができると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
最新の知見を含めた先行研究のレビューを行ったことにより,研究計画を修正する必要が生まれたこと,調査協力者を得ることに想定よりも時間がかかったことから,調査開始がやや遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
調査協力を得られる見通しがある程度立ったため,2024年度から理系研究者・大学院生合計20名程度に対して心理検査バッテリー・インタビューを実施する調査を本格的に進めていく予定である。さらに,一般大学生を対象としたロールシャッハ法の調査実施についても並行して行う。
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Causes of Carryover |
当該年度の研究の進捗がやや遅れ,調査の開始が遅れたために,次年度使用額が生じた。翌年度には,当該年度に実施を予定していた調査をあわせて行う予定をしているため,調査実施にかかる費用,研究成果の発表にかかる費用を中心に支出することを計画している。
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