2023 Fiscal Year Research-status Report
Degenerate Whittaker functions and application to automorphic L functions
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23K12965
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Research Institution | NTT Communication Science Laboratories |
Principal Investigator |
堀永 周司 日本電信電話株式会社NTTコミュニケーション科学基礎研究所, メディア情報研究部, リサーチアソシエイト (70884625)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | 保型形式 / 保型表現 / 表現論 / アイゼンシュタイン級数 / 超幾何級数 / ベッセル周期 |
Outline of Annual Research Achievements |
保型形式や保型表現論の目標の一つは、L関数やその値の整数論的な意義を探ることにある。具体的な研究手法としては、積分表示がよく知られている。つまり、保型形式と、アイゼンシュタイン級数などの何らかの複素変数でパラメータ付けられた関数の積を部分群上で積分し、その積分とL関数の関係を調べるというものである。例えば、保型形式のフーリエ係数は典型例である。
本研究では、Sp(4)の離散系列表現を生成するアイゼンシュタイン級数を考え、そのフーリエ係数の類似であるベッセル周期を考察した。正則離散系列表現を生成する場合は、志村による合流型超幾何級数を用いた表示や水本による明示公式がよく知られている。しかし、非正則保型形式の場合、つまり大きい離散系列表現を生成する保型形式の場合は一切知られていない。それら周期は unfolding よりオイラー積表示を持ち、有限素点は既存研究からよく知られている。そのため、問題は無限素点であり、リー群上の関数の部分多様体上での積分の計算が必要となる。
本年度の研究成果としては、二点存在する。一つは、アイゼンシュタイン級数を構成するために標準切断を用意する必要があるが、その明示公式を得たことである。もう一点は、標準切断から定まる無限素点のベッセル周期積分についていくつかの場合に超幾何級数の積分を用いた表示をえた点にある。明示公式という意味ではもっと詳細な計算結果が必要であるため、得られた超幾何級数の積分を何らかの意味で解釈しなければならない。次年度ではその計算を実行し、論文としてまとめることを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績概要でも述べた通り、大きい離散系列表現に付随するBessel周期の計算を行った。まず初めに難関であると考えていた標準切断について明示公式を得た点は進展といってよい。実際、それら標準切断は一般にK-typeの重複度が1より真に大きくなるような放物型誘導表現から来るものも存在する。そういった重複度に係る微妙な問題が誘導表現の間の射の計算から解決できる点は興味深い。その後のBessel周期の計算には岩澤分解を通じた精密な計算が必要であり、各ステップの計算の確認に相応の時間と労力がかかる。計算を進めるうえでの公式集を共同研究者の成田氏と共に作っており、計算結果の確認作業が徐々に進んできている。本研究を通じて合流型超幾何級数の積分や和が自然に現れる。そのような対象が再度、合流型超幾何級数等になるのかそれとも別種の関数と結びつくのかは大変興味深い。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究としては、成田宏秋氏との共同研究においてSp(4)の大きい離散系列表現を生成するBessel周期の明示公式を完成させる。これまで述べた通り、いくつかの場合では合流型超幾何級数の積分として表示できているため、その積分の更なる計算を行うことが目標である。そのためには、これまでの計算の確認と合流型超幾何級数の特殊値の計算が必要となる。また、別の文脈においてBessel周期と対応する一般化ホイッタッカー関数についての計算がある。その一般化ホイッタッカー関数とBessel周期の比較を並行して行う。
そのほかの研究活動として、7月に韓国出張、整数論サマースクールや整数論オータムワークショップへの出張を考えている。そこで韓国やそこに訪問している多くの数学者との討論を通じて、最近の研究に関する情報交換を行う予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは、本年度は旅費に40万円計画していたが15万円のみしか使用できなかった点が理由である。元々予定していた整数論サマースクールなどへの出張を本若手研究ではなく別の研究費により拠出したことや、次年度での海外出張を考えた際に、旅費の予定である60万円では心もとないことにより本年度の使用額を少なく調節した。
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