2023 Fiscal Year Research-status Report
Research on finite type invariants and local moves for welded links
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23K12973
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
和田 康載 神戸大学, 理学研究科, 助教 (30836698)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 溶接ストリング絡み目 / 有限型不変量 / ミルナー不変量 / ブルンの性質 |
Outline of Annual Research Achievements |
nを自然数とする。n成分溶接ストリング絡み目は、3次元球体内のn成分ストリング絡み目の一般化にあたる概念である。Meilhan-Yasuharaは、W_d-同値と呼ばれる溶接ストリング絡み目全体のなす集合上の同値関係を定義し、有限型不変量が反映する1成分溶接ストリング絡み目の幾何的な性質は、W_d-同値により特徴づけられることを示した。この結果を受けて、Casejuane-Meilhanは「2つのn成分溶接ストリング絡み目がW_d-同値であるための必要十分条件は、それらの次数d未満の任意の有限型不変量の値が一致することである」という予想を提唱し、n=2, 3の場合にこの予想を証明した。 kをn以下の自然数とする。溶接ストリング絡み目Lが(n, k)-ブルンの性質をもつとは、Lの成分数はnであり、かつLの任意のk成分部分ストリング絡み目が自明であるときをいう。本年度は、(n, k)-ブルンの性質をもつ溶接ストリング絡み目に対して、上記のCasejuane-Meilhanの予想を証明することに取り組み、次の結果を得た:LとL'を(n, k)-ブルンの性質をもつストリング絡み目、dを2k以下の自然数としたとき、以下の3つの条件は同値である。 (i) LとL'はW_d-同値である。 (ii) LとL'の次数d未満の任意の有限型不変量の値が一致する。 (iii) LとL'の長さd以下の任意のミルナー不変量の値が一致する。 (i)と(ii)の同値性から、2k以下の自然数dに対して、Casejuane-Meilhan予想が成り立つことが証明された。さらに、(ii)と(iii)の同値性から、(n, k)-ブルンの性質をもつ溶接ストリング絡み目の次数2k未満の全ての有限型不変量に対して、ミルナー不変量が普遍的であることが示された。この結果をまとめた学術論文を現在執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、本年度の目標は(n, 1)-ブルンの性質をもつ溶接ストリング絡み目に対して、そのW_d-同値類の分類を与えること(すなわち、Casejuane-Meilhan予想を証明すること)であった。研究実績の概要で述べたように、本年度はn以下の任意の自然数kに対して、(n, k)-ブルンの性質をもつ溶接ストリング絡み目の場合にCasejuane-Meilhan予想を証明することができた。当初の目標を上回る研究成果が得られているため、当初の計画以上に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
(n, k)-ブルンの性質をもつ溶接ストリング絡み目を含む広いクラスである、各成分が自明な溶接ストリング絡み目を対象として、そのW_d-同値類の分類を与えること(すなわち、Casejuane-Meilhan予想を証明すること)に取り組む予定である。 自己交差の仮想化と呼ばれる局所変形で生成される溶接ストリング絡み目全体のなす集合上の同値関係を、自己仮想化同値という。任意の溶接ストリング絡み目は、各成分が自明であるような溶接ストリング絡み目と自己仮想化同値であることが分かる。この考察から着想を得て、自己仮想化同値とW_d-同値を組み合わせて得られる同値関係のもとで、溶接ストリング絡み目の同値類を調べることにより、上記の問題の解決を図りたい。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響により、現地参加を予定していた国外で開催される国際研究集会への出張を取りやめた。同様の理由により、国外の研究者との研究打ち合わせを予定通りに実施することができなかった。これらの理由から次年度使用額が生じた。 次年度使用額分は、主に出張旅費として使用する。研究成果発表および情報収集のために国内外の研究集会や学会へ参加すること、国内外の研究者と研究打ち合わせを行うことを計画している。
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