2023 Fiscal Year Research-status Report
New development of geometric complex analysis based on L2 estimates and L2 extension theorems
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23K12978
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
稲山 貴大 東京理科大学, 創域理工学部数理科学科, 助教 (00907404)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | 特異エルミート計量 / L2評価 / L2拡張定理 / 大沢竹腰の拡張定理 / 中野正値性 / 乗数部分加群層 / Griffiths正値性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,HormanderのL^2評価法や大沢竹腰のL^2拡張定理といった複素解析的な技術を通じて,正則ベクトル束の特異エルミート計量の性質を明らかにすることにある.本年度は,共同研究で特異エルミート計量の中野正値性について研究した. 特異エルミート計量の中野正値性をどう定式化するかという問題は分野の長年の懸案であり,様々なアプローチが存在することが知られていた.特に,(1)滑らかな中野正値な計量による近似が存在する,という定義と,(2)特異エルミート計量がある種のL^2評価法の条件を満たす,という定義が存在した.この内,(2)の定義は私によって導入されたものである.我々はこれらのアプローチを比較検討することを始めた.その結果,特異エルミート計量が(1)の意味で中野正値であれば,(2)の意味で中野正値であることを示すことに成功した.加えて,ある種の順像層に対して(1)の意味で中野正値な特異エルミート計量を構成することに成功した.また,弱擬凸ケーラー多様体上の種々のコホモロジーの消滅定理を示すことにも成功した.この消滅定理は,既存の様々な消滅定理を特別な場合として包含する一般的な定理である.最終的にこれらの成果を論文としてまとめ,投稿した.また,前年度投稿していた論文がAnnales de l'Institut Fourier誌に受理された. 研究期間全体を通じて,特異エルミート計量に付随する乗数部分加群層の連接性,特異エルミート計量に対するL^2拡張指数,及び特異エルミート計量に関する中野正値性の定義と応用等について研究した.これらの研究成果は,今まで知られていなかった特異エルミート計量の種々の側面を明らかにするものであり,当初掲げていた「特異エルミート計量の性質を解明する」といった目的を十分に達成するものであると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
特異エルミート計量の中野正値性に対するより良い理解,結果を得ることが出来たため.特に,今まで存在していたいくつかの方針を包括することが出来た.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,特異エルミート計量の近似の理論を推し進めることを考えている.特に,ある種の順像層に入る特異エルミート計量に対して,その近似理論と中野正値性を解明することを目標としている.
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Causes of Carryover |
家庭の事情により,旅費を予定以上に使用することが出来なかった.次年度以降は,当初の計画通りに順調に使用していく予定である.
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