2023 Fiscal Year Research-status Report
Research on absolutely continuous diffraction and dynamical spectra for S-adic tilings
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23K12985
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
永井 康史 信州大学, 学術研究院総合人間科学系, 講師 (70910660)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | tiling / spectrum |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではタイル張りや語と呼ばれる対象のスペクトルの研究を行っている。特にいつそれらが純点スペクトルとなるのか、それらがルベーグ測度に関していつ特異になるのかという問題を研究している。純点スペクトルならばルベーグ測度に関して特異であるが、一般のタイル張りに対してこれらの性質を示すのは難しく、これに関するPisot予想が主要な未解決問題となっている。 S進タイル張りは、先行研究で扱われていた多くのタイル張りを含む広いタイル張りのクラスであり、自己アフィンタイル張りのクラスを含む。後者のクラスは先行研究で盛んに研究されており、特にSolomyakによるoverlapアルゴリズムが重要な道具となっている。当初の予定では、別の「繰り込み」という道具をS進タイル張りのクラスに適用できるよう拡張し、それによりスペクトルの特異性を示そうとしていたが、本研究では上記のoverlapアルゴリズムをS進タイル張りに拡張することに成功し、それによりS進タイル張りが純点スペクトルを持つための十分条件を得た。 タイル張りがブロックからなる場合など、いくつかの特別な場合にこの条件を適用できることも証明し、多くのS進タイル張りが純点スペクトルを持つことを証明した。また上記のPisot予想の特別な場合はすでに証明されているが、その拡張を証明することに成功した。 このスペクトルの決定の問題はエルゴード理論的・調和解析的・数理物理的に重要な問題である。この問題の解決について一定の進捗を得たと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度には学期中に単独で研究を行い、学期終了後の夏と春に共同研究者を訪問して議論を行ったことで、概ね順調に研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も今までと同様に研究を進める。共同研究者との議論を行うとともに、その他の専門家を訪問したり、研究集会に参加することで議論を行い、研究を深める。すでに9月にフランスで開かれる研究集会への参加が決まっている。 本研究で開発したoverlapアルゴリズムの技法及び繰り込みの技術を用いて、より多くのS進タイル張りのスペクトルの決定を行う。まずoverlapアルゴリズムがより多くのS進タイル張りに適用できることを示し、これらのタイル張りが純点スペクトルを持つことを示す。また繰り込みの技術を用いることで、タイル張りに対する「力学系スペクトル」と「回折スペクトル」の関係を明らかにする。
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Causes of Carryover |
3月の出張の航空券代を出張先から支出してもらったため、次年度使用額が生じた。翌年度における旅費に利用する。
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