2023 Fiscal Year Research-status Report
力学的境界条件下の問題に対する、任意多角形格子上の構造保存数値解法の構成
Project/Area Number |
23K13009
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
奥村 真善美 甲南大学, 知能情報学部, 講師 (80913045)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | 数値解析 / 構造保存数値解法 / Cahn-Hilliard方程式 / 力学的境界条件 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではこれまでに、相分離現象を記述する、放物型偏微分方程式のCahn-Hilliard方程式系で、近年、Goldstein-Miranville-Schimperna(GMS)やLiu-Wu(LW)によって提唱された、2種類の力学的境界条件下のモデルに対し、境界での変分計算も行うことで適切な離散境界条件を導出し、離散変分導関数法に基づく構造保存スキームを空間二次元で直交格子の場合に構成した。当該年度においては、その構造保存スキームの理論解析として、GMSモデルに対するスキームの可解性の結果を得た。その証明では、ある行列の正則性を示す必要があるが、当該年度中盤までの結果では、条件付きでその正則性を導出していた。より具体的には、空間分割幅に応じてどれくらい時間分割幅を絞れば、 少なくともその行列が正則であるかを明確にした。当該年度終盤にかけ、その結果を改良することができ、具体的には、ある特別な場合において、その分割幅に関する条件を課すことなく、無条件にその行列の正則性を証明することに成功した。また、本研究で構成した、GMSモデル、LWモデルに対する構造保存スキームによる数値計算を通じ、それぞれのモデルが持つ保存則の違いに起因する、興味深い数値解の挙動の違いに関する数値的結果が副産物的な結果として得られた。なお、本研究の主題である、凸多角形格子上での構造保存スキームの構成に関しては、まず一手目として、動的境界条件ではなく、Neumann境界条件下の問題にはなるが、空間領域を円領域とした場合で、その構造保存スキームを構成および実装し、降籏ら(2011)の結果の再現実験を行うことができている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
凸多角形格子上でのCahn-Hilliardモデルに対する構造保存スキームの構成およびその実装は、まだ非力学的境界条件のNeumann境界条件下でしかできていない。特に境界での拡散の役割を果たす、ラプラス-ベルトラミ作用素の項が登場しない、単純な動的境界条件下のモデルに対しては、Neumann境界条件下のスキーム構成法がほぼ直接応用可能であるが、本研究で主に対象とする力学的境界条件下のCahn-Hilliardモデルでは、その境界条件にラプラス-ベルトラミ作用素の項が現れるため、その離散化をどのように与えるかが課題となる。一方で、直交格子の場合にはなってしまうものの、可解性などの理論解析の結果は集まりつつある。 以上を鑑みると、全体としては「遅れている」という評価が妥当であるとみている。
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Strategy for Future Research Activity |
凸多角形格子上での力学的境界条件下のCahn-Hilliardモデルに対する構造保存スキームの構成およびその実装が最重要課題であることから、まずはこれに取り組む。特に、離散化する前の元の連続モデルのラプラス-ベルトラミ作用素の定義に立ち戻り、その離散化の糸口を掴む。それに加えて、国内学会や国際会議等に参加し、他の研究者との議論の機会を増やしつつ、Zoom等によるWebinar会議も積極的に利用して国内外の有力な研究者との交流を増やし、課題解決の方策を探る。また、本研究で対象とする問題は空間多次元の問題であることから、数値計算を行う場合にはこれまでの構成法に基づく構造保存スキームでは計算時間がかかる恐れがある。そこで、今回の問題に対しても、時間ステップを余剰に導入し、スキームの非線形性を弱める線形多段階化と呼ばれる手法を用いることで、線形陰的な離散変分導関数法スキームも構成し、計算コストの削減に取り組む。
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