2023 Fiscal Year Research-status Report
ボラティリティ変動の激しさに対するセミパラメトリック推定手法の開発
Project/Area Number |
23K13016
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
高畠 哲也 広島大学, 人間社会科学研究科(社), 助教 (80846949)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 非整数ブラウン運動 / 確率ボラティリティ / ラフボラティリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
近年「ラフボラティリティモデル」と呼ばれる金融資産価格モデル(対数ボラティリティ過程がハースト指数1/2未満の非整数ブラウン運動により駆動される確率ボラティリティモデル)が、既存モデルでは再現不可能なデータの特徴を再現できるため、金融市場に携わる研究者・実務家双方の関心を集めている。しかし、確率的なトレンド構造を持つことに伴う非定常性・非ガウス性、観測誤差の影響による自己相似則の崩れに起因し、時系列および連続時間確率過程の統計解析の分野で発展してきた既存理論が適用できず、「ラフボラティリティモデル」 に対する信頼性の高い統計解析の理論構築には未だ問題が残されている。本研究では、観測時系列が高頻度観測されることを利用して、トレンド構造に依存せずボラティリティ過程のヘルダー指数(ボラティリティ過程の変動の激しさに関わるパラメータ)をセミパラメトリック推定する理論の構築、そして観測誤差の影響で自己相似則が崩れた状況下での漸近有効推定量(漸近的に最適性を有す推定量)の構成に取り組んだ。研究の結果、1)観測誤差を伴う非整数ブラウン運動から得られた高頻度観測時系列、2)長期記憶性や局所自己相似則を有す一般の連続時間定常ガウス過程から得られた低頻度観測時系列、3)定数ドリフトを有す非整数ブラウン運動から得られた高頻度観測時系列などに対し、良い漸近的性質を有す推定量の提案、更に幾つかのモデルにおいて提案した推定量の漸近有効性を証明することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
推定量の漸近的性質を示す際、定常ガウス時系列から定まる二次形式のキュムラントとその極限との間の精密な誤差評価が必要となる。これまでに本研究で扱う幾つかの統計モデルに対し、推定量の漸近的性質を示す上で必要となる上記精密な誤差評価を与えることに成功し、更にそれらの結果を用いて良い漸近的性質を有す推定量を提案することに成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに獲得した知見を活用し、長期記憶性や局所自己相似則を有す一般の連続時間定常ガウス過程が高頻度観測される場合における尤度・近似尤度解析の理論構築に取り組む。また得られた研究成果をレヴィ過程駆動型連続時間移動平均過程からの高頻度・低頻度観測時系列やWeak FARIMAモデルなどの非ガウス時系列へ拡張することも試みる。
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Causes of Carryover |
例年年度末に開催されていた研究集会の時期が変更になり、年度をまたいだため。
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