2023 Fiscal Year Research-status Report
Theory of dynamics of jamming transition
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23K13031
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
池田 晴國 学習院大学, 理学部, 助教 (30911763)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | 非平衡相転移 / ジャミング転移 / アクティブマター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目標は、ジャミング転移点近傍の粉体における動的臨界指数を理論的に導出することである。ジャミング転移点近傍の粉体は、非平衡性とフラストレーションが共存する究極の強相関系であり、その解析は容易ではない。理論構築のヒントを得るために、本年度は、先ずフラストレーションが無い非平衡系における相転移の研究を行った。特に、Vicsek模型について一定の成果を挙げることができた。以下で詳細を説明する。 1995年にVicsek等は、鳥や魚の群れを記述するために、動き回るスピン模型を導入した(Vicsek模型)。Vicsek模型は、生物集団を統計力学の手法を用いて解析しようという最初期の研究であり、現在もなおアクティブマターの分野で活発に研究されている。またこの模型は、平衡系ではマーミン・ワグナーの定理によって禁止されている、二次元系でも連続対称性の破れを示す等、平衡系では見られないような様々な非自明な振る舞いを示し、統計物理学の分野でも注目を集めている。1995年にVicsek等の論文が出版された直後、TonerとTuは、Vicsek模型の非自明な振る舞いを説明するための連続場の理論を構築した(Toner-Tu理論)。しかしながら、最近の大規模数値シミュレーションによって、Toner-Tu理論が予言するスケーリング則は、実際のVicsek模型のシミュレーションとは整合しないことが明らかになった。 本研究では、理論とシミュレーションの不整合を解消するために、Toner-Tu理論では見落とされていた非線形項を含む、現象論的な模型を構築し、その解析を行うことで、新しいスケーリング理論を構築した。計算された、スケーリング指数は、数値シミュレーションの結果と見事に一致することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Vicsek模型を記述する現象論的な模型を構築し、スケーリング理論を構築することに成功した。この指数の正確な値を求めることは、Vicsek模型が提案されてから、約30年間にわたり達成され得なかった難問であり、当該分野に与えるインパクトは大きい。したがって、本研究課題は、当初の計画以上に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
Vicsek模型のスケーリング指数を決める上では、密度ゆらぎが重要な役割を果たす。一方で、十分密度が高い系では、密度ゆらぎが無視できて、系は実効的に、非圧縮流体として振る舞うことが予想される。この圧縮・非圧縮性がスケーリング指数にどのような影響を与えるのかを調べる。 また、Vicsek模型の解析で培った、非平衡系におけるスケーリング理論を、粉体系のジャミング転移に適用することを試みる。
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Causes of Carryover |
今年度は、申請者が現在所属している学習院大学から、研究費として70万円の支給を受けることができた。大学から支給される研究費は次年度に持ち越すことができないため優先的に使用し、科研費を次年度に持ち越すこととした。持ち越した科研費は、投稿論文をオープンアクセスにするための費用として用いる予定である。
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