2023 Fiscal Year Research-status Report
Ultrafast measurement of relativistic electromagnetic radiation
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23K13080
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
太田 雅人 核融合科学研究所, 研究部, 助教 (30856513)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 特殊相対性理論 / 電磁気学 / 電子ビーム / 加速器 / 電気光学検出 / 放射場 |
Outline of Annual Research Achievements |
放射光は、現代物理における必要不可欠な道具としての立ち位置を確立している。放射光施設用の加速器が世界中で建設され、理学・産学・医学(生命科学、物質科学、化学、地球科学、環境科学等)に跨って放射光が利用されている。さらに、宇宙物理においては、天体現象の情報を引き出すための重要な計測対象となっている。放射光の代表は、磁場によって荷電粒子が軌道を曲げた際に生じるシンクロトロン放射である。他にも、有名な放射光として、高エネルギー荷電粒子が水中などの真空より大きい屈折率体中を伝搬する際に生じるチェレンコフ放射がある。両者とも、上述した加速器物理、宇宙物理において、応用が盛んである。 上述の応用例中では、この放射光は、基本的に、荷電粒子から離れた遠方において時間積算で計測が行われている。しかし、近接場における放射光の時空間分布計測は今まで行われていない。なぜなら、相対論的電場は超高速な荷電粒子近傍に付随、または生成されるため、近接場計測にはそれに追従するだけの超高速計測が必要となるからである。我々は、現在、電気光学検出とエシェロン式シングルショット計測を用いることで、世界に先駆けて、高エネルギー電子ビームの周りに形成される相対論的クーロン電場の時空間分布のシングルショット超高速計測に成功している(M. Ota et al., Nat. Phys. 18, 1436-1440 (2022))。そこで、先行研究で行った荷電粒子が静止・等速直線運動を行う際に生成されるクーロン電場における相対論的効果の検証に引き続き、新たに、荷電粒子が加速度運動を行う際に生成される放射場における相対論的な効果の検証を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々が開発を行った、電気光学検出とエシェロン式シングルショット計測を組み合わせた相対論的クーロン場の計測系は、相対論的放射場の計測にそのまま転用可能である。電気光学検出では、非線形光学効果を介して、“電気”的な情報を“光学”的な情報に変換することで、サブピコ秒の時間分解能を有する電場の超高速計測を行う。したがって、非線形光学結晶に線形加速器で生成された高エネルギーな電子ビームを入射して、結晶内に電子ビームの周りの電磁場を印加し、結晶内に生じた屈折率変化(非線形光学効果)を計測光の偏光変化として読み取る。本実験では、この、先に行われた相対論的クーロン場の計測実験で用いられた実験系において、特に、非線形光学結晶の前に磁石や屈折率体を設置することで、シンクロトロン放射やチェレンコフ放射の時空間分布計測を実施することができる。我々は既に、この放射場における相対論的な効果の検証実験に着手しており、今まで理論・数値計算でのみ取り扱われてきた、相対論的放射場の兆候を、実験的に捉えつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り、我々は電気光学検出とエシェロン式シングルショット計測を組み合わせた相対論的放射場の計測を新たに実施しているが、その過程で判明したことは、元々高エネルギー電子ビームの周りに生成される相対論的クーロン場と、加速度運動を行うことで新しく生成される相対論的放射場を分離して計測する必要があるということだ。なぜならば、クーロン場は電子ビームがある程度の距離を等速直運動する際に積算され、増強された電磁ポテンシャルによって生成されるが、放射場(シンクロトロン放射、チェレンコフ放射)の場合は短距離の運動(磁石による加速度運動、屈折率体の通過等)によって生成されるため、前者よりも後者の方は計測される電場強度が弱い傾向にある。加速度運動の有無という二つの実験結果を比較することで、解析的にクーロン場を減算することはある程度は可能であるが、原理実証実験では、シンプルな実験系で実験的に信号のSignal/Noize比を向上させる必要がある。そこで、本年度は、クーロン場と放射場を分離して計測する系の開発に注力する。
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Causes of Carryover |
既に所有していた、消耗品である電気光学結晶が、想定よりも耐性があったため、本年度の追加購入を行う必要がなかったため、次年度使用額が生じた。次年度の研究発表のための旅費の一部として使用する予定。
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Research Products
(8 results)