2023 Fiscal Year Research-status Report
大電力パルススパッタ法による二酸化バナジウム薄膜の低温成長と熱遮蔽窓への応用
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23K13091
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 機能性酸化物薄膜 / 酸化亜鉛(ZnO) / 二酸化バナジウム (VO2) / 大電力パルススパッタ法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の初年度となる、本年度の大きな目的は、(ⅰ)前若手研究のテーマで得られた条件をもとに直流マグネトロンスパッタ法(DCスパッタ法)と大電力パルススパッタ法HiPIMS法を用いてガラス基板上へ酸化亜鉛(ZnO)薄膜の成膜を行い、二酸化バナジウム(VO2)薄膜の基板を準備する、(ⅱ)光学設計シミュレーションソフトを購入し、最適なVO2と反射防止膜のシミュレーションを行う、 (ⅲ)次年度のVO2薄膜の堆積に必要な機材の準備も行うことであった。(i) に関しては、前テーマで確立した製膜条件で、DCとHiPIMSスパッタ法を用いてガラス基板上にZnO薄膜の堆積を行った。作製したサンプルはX-線回折(XRD)装置を用いて結晶性、走査型電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて表面・断面構造と膜厚の評価、分光測定法を用いて可視光領域の透過率を評価し、VO2を堆積させるためのZnO/Glass基板の準備を行った。(ⅱ)に関しては、光学設計シミュレーションソフトを購入し、最適なVO2と反射防止膜のシミュレーションの基本を構築し、最適なVO2と反射防止膜シミュレーションを開始した。 (ⅲ)に関しては、今あるスパッタ装置の改造を検討したが改造にかかる費用が高く、新規チャンバを設計・試作することにし、試作を完成した。新規チャンバでVO2薄膜の製膜を行う前に今あるスパッタ装置でHiPIMS法を用いてVO2薄膜の堆積を試みた。更に、サブテーマで酸化タングステン(WO3)の研究を進めている。今年度行った実験結果の一部は成蹊大・東海大・東京都立大で行った3大学合同セミナー、JVSS2023、MRM2023で報告し、一部は2024年7月に京都で開催されるISSP2024で報告する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」で述べたように本年度はDCスパッタ法とHiPIMSスパッタ法を用いてZnO薄膜の堆積を行ったが、XRD解析ではZnO薄膜の異相成長が確認され、その除去が必要である。また、光学設計シミュレーションソフトを購入し、最適なVO2と反射防止膜のシミュレーションの基本を構築し、シミュレーションを開始したが最適なVO2と反射防止膜の結果はまだ得られていない。また、次年度のVO2製膜のために試作したチャンバーの真空性能がまだ評価できてない。以上のようなことから「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度で、ZnO/Glass基板の準備とシミュレーションプログラムの構築ができたので次年度はシミュレーション結果の検討と最適なVO2と反射防止膜の最適化を行う。その結果を元にHiPIMS法を用いてZnO/Glass基板上にVO2薄膜の堆積を行う。具体的には、duty比、パルス幅、基板温度、酸素流量と膜厚を変化させて製膜を行う。温度に対する抵抗変化(R-T)特性とX線回折装置を用いて作製したVO2薄膜の成長を確認する。VO2薄膜の成長が確認できたら、FE-SEMを用いて表面と断面の観察を行うとともに、断面SEMから膜厚と成膜速度の評価も行う。また、X線光電子分光(XPS)を用いてVO2薄膜の組成を調べる。FE-SEMとXPS測定は東海大学で実施する予定である。作製するVO2薄膜の可視光領域の透過率測定と温度依存透過率の測定を行う。HiPIMS法を用いて300℃以下の低温で相転移を示すVO2薄膜の成長に成功したら、結果のまとめを行い、論文投稿や学会発表を行う。
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Causes of Carryover |
本年度は、次年度作製するVO2薄膜のR-T特性を測定するため4端子デジタルマルチメータの購入を予定していたが値段が予定していた予算よりも高くなっており、今年度の予算で購入が困難だったので繰り越した。現在、研究室にあるもので実験準備を進めているが、4端子デジタルマルチメータは次年度の予算と合わせて購入する予定である。4端子デジタルマルチメータの購入が不要になったら高精度Ar流量マスフロコントローラの購入を検討する。現在使用しているAr流量マスフロコントローラの最大値が20 sccmであるので最大100 scmm流せるAr流量マスフロコントローラの購入を検討する。
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