2023 Fiscal Year Research-status Report
Accurate estimation of dark matter density profile in dwarf spheroidal galaxies from interdisciplinary viewpoint
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23K13098
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀米 俊一 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任研究員 (90932921)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 暗黒物質 / 矮小楕円体銀河 / 天文学 / 宇宙論 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、主に以下の三つの研究を行った。 1. 宇宙論的観点に基づいた矮小楕円体銀河中の暗黒物質分布推定についての研究:特に冷たい暗黒物質(CDM)の構造形成理論に着目し、拡張プレス・シェヒター理論に基づく暗黒物質ハロー質量分布関数と潮力破壊モデルとを組み合わせた事前確率分布(satellite prior)と、経験的な星質量-ハロー質量間の関係とを組み合わせた推定手法を提案し、これに基づき現在までで知られたいくつかの矮小楕円体銀河についてその暗黒物質分布を推定した。また推定に当たっては、Jeans方程式から計算される動径依存の速度分散プロファイルを用いることで、従来の系全体の速度分散をもとにした解析より精密な解析を行った。 今回の暗黒物質密度推定値と従来の手法(星質量-ハロー質量関係を用いない)ものを比較したところ、幾らかの矮小楕円体銀河について従来よりも濃い密度推定結果を得た。 これにより、従来の推定手法では密度を過小評価している可能性が示唆され、将来の矮小楕円体銀河を用いた暗黒物質検出がより高感度で行える可能性が高まった。 2. 他の暗黒物質モデルに対する事前確率分布:暗黒物質の最重要候補であるCDM以外にも、他の暗黒物質モデルに対してもCDMと類似の事前確率分布を得られれば、これについても同様の解析を行うことで矮小楕円体銀河の暗黒物質分布への宇宙論的制限を得ることができる。これについて、特に自己相互作用する暗黒物質(SIDM)を仮定し、CDM-SIDM間のパラメータ同士を関連づけるパラメトリックモデルを用いた事前確率分布を計算する手法についての研究を行った。 3. 解析用ライブラリの整備:今までの研究で用いてきた矮小楕円体銀河の動力学解析を行うためのPythonパッケージを整備し、Jeanspyとして公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた構造形成理論を用いた矮小楕円体銀河の暗黒物質分布推定については、具体的な推定値を得るとともに従来の手法との比較を行うことができ、一定の成果を得ることができた。 また重要な暗黒物質候補であるSIDMについても事前確立分布の構築もおこなうことができ、今後のSIDMへの制限を与える上で重要な成果を得ることができた。 また解析用ライブラリについても整備を進めることができ、今後の解析をよりスムーズに行うための下準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究までで宇宙論的観点を加えた矮小楕円体銀河の暗黒物質分布推定手法の基礎を確立することができた。今後は特に今年度構築したSIDMのsatellite priorを応用した矮小楕円体銀河暗黒物質分布推定を行い、SIDMについてその自己相互作用や質量などについての制限を得ることができないかを検討する。また研究内容をさらに発展させるため、他の有望な暗黒物質モデルについても矮小楕円体銀河を用いた制限をかけられないかを検討する。
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Causes of Carryover |
研究所年度のため当初予定していたよりも物品を多く揃える必要があり、これに重点をおいた結果旅費として消費仕切れない端数として数万円が残った。 次年度は残高分を旅費に充当し、より積極的に研究成果発表を行いたい。
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