2023 Fiscal Year Research-status Report
r過程中性子捕獲反応における超流動性と共鳴状態の役割の解明
Project/Area Number |
23K13104
|
Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
小林 良彦 大分大学, 教育学部, 講師 (30815353)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
Keywords | 中性子過剰核 / 準粒子共鳴 / 中性子捕獲反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、重い元素の起源となるr過程中性子捕獲反応における超流動性および共鳴状態の役割を理論的に解明することである。特に、超流動性によって生ずる新奇共鳴状態「準粒子共鳴」の効果について詳らかにすることを目指す。 研究期間初年度である2023年度には、超流動性と共鳴状態を扱える座標空間表示Hartree-Fock-Bogoliubov理論を用いて、二つの点について進展があった。 1. 21C(炭素21)の分解反応(21C→20C+n)の崩壊スペクトルを理論的に分析し、準粒子共鳴が崩壊スペクトル中にピーク構造をもたらすことを明らかにした。また、理化学研究所RIBFで得られた21Cの実験データを理論計算により定性的に説明することにも成功した。加えて、この研究成果を学術論文として発表することもできた。 2. 超流動性の効果の下で、散乱準粒子波動関数が電磁遷移をし、束縛状態の準粒子波動関数となる中性子捕獲反応を計算する数値計算コードを開発した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画当初は、初年度のうちに中性子捕獲反応における超流動性と共鳴状態(1粒子共鳴・準粒子共鳴)の効果を分析する段階まで研究を進める予定であったが、結果としてその段階までは至れなかった。しかしながら、上記研究実績に書いた通り、2023年度は分解反応の崩壊スペクトルにおける準粒子共鳴の性質について明らかにすることができ、かつ、超流動性の効果の下での中性子捕獲反応を記述する数値計算コードの開発を行うことができた。よって、達成度を「おおむね順調に進展している」と評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
まずは、開発した数値計算コードを用いて、中性子捕獲反応における超流動性と共鳴状態(1粒子共鳴・準粒子共鳴)の効果を分析する。分析対象は先行研究でも扱われている中性子過剰ニッケル(Ni)同位体および中性子過剰スズ(Sn)同位体の中性子捕獲反応とする予定である。また平行して、井戸型ポテンシャルなどの簡便なモデルを用いた解析的な分析を行い、超流動性の効果の下での中性子捕獲反応の特徴の理解深化を試みる。
|
Causes of Carryover |
研究打ち合わせをオンラインで行うことが増え、旅費の使用が当初計画していたよりも少なかったため。次年度は対面による学会発表や研究打ち合わせを行い、旅費を使用していく予定である。また、中性子捕獲反応に関する学術図書の購入も予定している。
|