2023 Fiscal Year Research-status Report
Fundamental study of the black hole quasi-normal modes and gravitational-wave ringdown
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23K13111
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大下 翔誉 京都大学, 白眉センター, 特定助教 (50911632)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 重力波 / ブラックホール |
Outline of Annual Research Achievements |
主な研究実績は、リングダウン重力波の振幅の新たなモデル化の手法を提案したことである。従来までは、リングダウン重力波波形は、複数の準固有振動の重ね合わせでモデル化することが一般的であった。しかしこれには、複数のフィッティングパラメーターが必要で、「オーバーフィッティング」というデータ解析上の問題を引き起こすことが知られている。しかし今回提唱した新たなモデルでは、準固有振動ではなく、ブラックホール周りに在るlight ringの透過率を表すgreybody因子でリングダウン重力波の振幅をモデルする。これを用いる利点として、フィッティングパラメーターの数が極めて少なくなること、そしてリングダウン重力波放射の開始開始時刻の不定性がないことが挙げられる。 当該年度で発表した研究成果の1つでは、このgreybody因子によるリングダウン重力波のモデルが、少なくとも質量比が極めて大きいブラックホール合体の場合に適用可能であることを指摘した。 この他にも、高速自転する超大質量ブラックホールを起源とするリングダウン重力波には、長寿命な準固有振動が複数含まれていることから、重力理論の検証において極めて有利となることを研究で明らかにした。LISAによる将来観測を想定し、フィッシャー解析に基づいて準固有振動数の検出精度を精細に調べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
greybody因子による新たなリングダウン重力波モデルに関する理論研究を展開し、その実用性を示した。これは当初想定していた、リングダウンの開始時刻不定性の解決の1つのデモンストレーションにもなっている。また、今後稼働予定であるLISAの観測精度を考慮した理論研究も展開し、超大質量ブラックホールが重力理論の高精度検証において極めて重要となり得ることを示す研究成果も発信した。これも当初研究課題として挙げていた内容の1つに含まれる。これらに加えて、greybody因子によるモデルがブラックホールの質量・角運動量推定に貢献し得る手法であることを示唆する成果も得られている。以上の点から、本研究は順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
SXS collaborataionにより公開されているデータを用いた等質量比程度のブラックホール合体を起源とするリングダウン重力波の開始時刻不定性や、その不定性の克服方法を検討する。これに関する研究の一部は準備稿として既に公開しているが、この成果をさらに深めるためには、greybody因子によるモデルと準固有振動の重ね合わせによるモデルの関係性を明確にする必要がある。このために、励起因子(準固有振動各々の励起性を定量化した物理量)に関する理論研究を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
より最新の計算資源を計算機クラスターに増設するため、昨年度はそれ以外の計算資源補充に留めて研究環境を整えた。最新CPUの発売を待って、2024年度に自身が管理する計算機クラスターのコア数を大幅に増設する計画とした。発生した次年度使用額を合わせた額で、最新のマルチコアプロセッサーCPUなどの部品を購入する予定である。
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