2023 Fiscal Year Research-status Report
熱中性子イメージング検出器による月周回衛星を活用した中性子寿命の測定
Project/Area Number |
23K13135
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
辻 直希 京都大学, 理学研究科, 特定研究員 (80963537)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 中性子寿命 / 放射線検出器 / イメージング検出器 / シンチレータ / SiPM |
Outline of Annual Research Achievements |
物理学の重要なパラメータである中性子の寿命には、ビーム法とボトル法という主要な2種類の計測法の間で依然として8.6秒もの系統的な違いが知られている。この問題に切り込む新手法として、月表面から漏出する熱中性子を月周回機で測定し、高度ごとのプロファイルから中性子寿命を導出したい。本研究では、コーデッドマスクを用いた熱中性子イメージング検出器を開発し、月面から飛来した熱中性子の到来方向を同定することで、測定誤差を減らし中性子寿命の精密測定を目指す。 (1) 中性子検出用の電子回路基板を製作した。光検出器SiPMをピクセル状に並べたアレイに中性子に感度のあるシンチレータを搭載することにより、中性子の入射位置に対する分解能のある中性子検出器を開発している。SiPM1つ1つ読み出すのが理想だがチャンネル数が多く開発コストがかかるため、信号の抵抗分割により端点の4 chで読み出し、信号強度の強弱から入射位置を特定する手法を採用した。これを実現するために4 chの信号を読み出し、及び高速サンプリングによる波形弁別により中性子とバックグラウンドのガンマ線を弁別できる機能を搭載した電子回路基板を製作した。 (2) 開発した電子回路基板に陽子ビームを照射し、宇宙環境でも大きな問題なく動作可能であることを実証した。宇宙環境では高強度・高レートの放射線に曝され、基板上のIC素子が損傷する恐れがある。特に民生品の場合は放射線耐性が十分に調べられていないため、事前に耐性の評価をする必要がある。宇宙環境を想定した200 GeVの陽子ビームを基板に照射したところ、5年程度の軌道上運用は問題ないことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中性子用シンチレータの入手難により、位置検出器の製作がやや遅れている。しかし2024年度にコーデッドマスクを含め統括的に検出器製作を進めることで、順調に進展できる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) GS-20等の薄い中性子用シンチレータにSiPMアレイを装着した位置分解能を持つ中性子検出器を開発する。厚さ2 mm程度の1枚板のシンチレータと、3 mm角のSiPMアレイを使用し、3 mm × 3 mm という高い位置分解能を目指す。 (2) 中性子遮蔽材のB4Cシートやカドミウム板金で、コーデッドマスク部分のランダムパターンを製作する。コーデッドマスク検出器を製作し、視野や角度分解能を評価する。
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Causes of Carryover |
基金として次年度の使用分を確保している。 次年度は検出器の開発、成果報告にかかる費用などに使用する。
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Research Products
(8 results)