2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23K13139
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
福島 肇 筑波大学, 計算科学研究センター, 助教 (10961659)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 球状星団形成 / 星団形成 / 星形成 / 銀河形成 / 高赤方偏移銀河 / 低金属量星 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、銀河系内にみられる球状星団について、その形成過程を解明することを目的に研究を行っている。球状星団形成の研究は、JWSTの観測により、球状星団に相当する星質量・密度を持つ天体や、その第二世代星と類似した金属量組成を持つ領域が高赤方偏移銀河で発見されたことで、劇的に状況が変わりつつある。 23年度は、本研究計画として実施した、銀河・星団形成シミュレーションを用いて、高赤方偏移銀河で発見された天体の形成機構の解明について研究を進めた。初めに、球状星団形成における星質量分布関数(IMF)が大質量星が多く誕生するtop-heavy IMFだった場合について計算を行った。top-heavy IMFでは、星質量あたりの電離光子放出数が増加し、電離フィードバックが強化されるために、球状星団に相当する高密度星団が形成されるためには、より星形成雲がコンパクトである必要があることを示した。また、JWSTにより、球状星団と類似した、窒素を酸素に対して豊富に含む銀河が発見された。この天体と球状星団の関係を示すために、銀河・星団両スケールのシミュレーションを実施した。いずれの場合も、超新星爆発による酸素供給が開始されるまえに、星風により窒素過剰な環境が作られる必要がある。これは言い換えると、動的時間が1千万年以下となる非常なコンパクトな系であることを示している。銀河スケールについては、銀河のもつ角運動量が典型的な場合と比べて小さい場合に高赤方偏移銀河において窒素過剰な環境となることを示した。また、星団スケールについては、星団質量が太陽の百万倍と非常に大質量な場合に、窒素過剰な星が多く誕生することを示した。これらの結果は、JWSTにより発見された天体は、球状星団の誕生直後の姿である可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で計画した銀河・星団両スケールにおけるシミュレーションの実施は開始しており、初期成果は論文として投稿中・投稿準備中であることから、おおむね順調に進展していると言える。ただ、JWSTの観測による窒素過剰領域の発見について、22年度終盤から23年度にかけて報告が相次いだことから、急遽計画になかった星風や超新星爆発による元素供給をシミュレーションに含める必要があった。また、発見された窒素過剰領域は数100pc以下のスケールで生じているために、その領域を解像して計算する必要があったことから、計画にあった宇宙論的シミュレーションを用いた方法ではなく、より高い解像度で計算できる、孤立した銀河円盤についてシミュレーションの実施に計画を変更した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き研究計画に沿って研究を進めるとともに、JWST等により球状星団形成に関連した観測結果が多数報告されることが予想されることから、それに向けた準備、もしくは適応した研究を進めていきたい。窒素過剰については、その起源について、星風や超大質量星形成が候補にあがっており、球状星団形成との関連について調べる必要がある。さらに、その輝線比などの観測的性質についても調査していく予定である。また、JWSTにより発見された銀河は理論予測よりも星形成が活発であることが判明してきたが、その起源としては、高赤方偏移銀河でフィードバック機構による星形成の抑制が起きづらくなっていることが指摘されている。本研究のシミュレーションはこの課題についての計算に適応している上に、高星形成効率は球状星団形成でも実現されることから、発見された銀河と球状星団の母銀河が対応するかを明らかにする方向でも研究を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、物品購入及び、海外・国内研究会の参加や論文出版費に支出することを予定していた。しかし、昨今の物価高及び円安、もしくはオープンアクセス化の複合的な理由による論文出版費・海外への出張費が高騰している状況を鑑みて、本研究で投稿中・執筆中の複数論文の出版費の捻出、及び論文受理後の最も効果的な時期における海外研究会の発表を行うために、次年度使用額に記載の金額を24年度に支出することにした。
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Research Products
(29 results)
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[Presentation] ALMA ACA による小ゼラン雲超広域 CO 探査 (4):N83N84/N86 領域 12CO,13CO (J=2-1) 輝線データ解析2023
Author(s)
松本健, 小西亜侑, 北野尚弥, 國年悠里, 村岡和幸, 大西利和, 徳田一起, 大野峻宏, 立原研悟, 福井康雄, 柘植紀節, 佐野栄俊, 河村晶子, 福島肇, 竹腰達哉, 小林将人
Organizer
天文学会2023秋季年会
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