2023 Fiscal Year Research-status Report
電波観測で解明する系内X線連星ジェットによる宇宙線粒子加速
Project/Area Number |
23K13148
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
酒見 はる香 鹿児島大学, 理工学研究科, プロジェクト研究員 (40944848)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 電波天文学 / 宇宙線 / X線連星 / 宇宙ジェット |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、我々の銀河系内で最も活発なX線連星の1つであるSS433のジェットで観測されたTeVガンマ線領域の調査により、SS433ジェットで加速されている宇宙線の種類や、支配的な宇宙線粒子加速機構、加速可能な宇宙線の最高エネルギーを明らかにすることである。2023年度はALMA, VLA, 野辺山45m電波望遠鏡で観測されたTeVガンマ線放射領域周辺の星間物質のデータ解析を主に行なった。また、調査領域の拡張のため野辺山45m電波望遠鏡での追観測を行なった。その結果、TeVガンマ線を放射しているSS433 X線ジェットの表面に空間相関の良い星間物質を複数同定することに成功した。これらの星間物質にはジェットとの衝突を示唆するような特殊な速度構造が見られることから、SS433ジェットと関係の深い星間物質である可能性が高いことを示した。また、2023年度にTeVガンマ線観測に関する新たな論文が出版され、SS433ジェットで加速されている宇宙線粒子の種類が電子である可能性が高いことが報告された。その結果を踏まえ、我々が同定した星間物質が宇宙線粒子加速に寄与している可能性が高く、また宇宙線加速機構が乱流加速である可能性を示唆した。本結果については現在論文を執筆中であり、2024年度中の出版を目指している。また次年度へ向けた準備として、電波干渉計MeerKATの観測データの解析環境を構築した。データ較正に必要なソフトウェアを導入し、テストデータを用いた実際の解析を行なった。これによりMeerKATを用いた偏波観測データから磁場構造を導出することが可能であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2023年度の当初の研究計画はALMA、VLA、野辺山45m電波望遠鏡で観測された星間物質の観測データの較正と解析であり、これらは2023年度中に完了することができたため、研究は順調に進展しているということができる。また、2024年度に実施予定のデータ解析に向けた環境構築を2023年度内に行うことができたため、当初予定よりも計画が進展しているということができる。また、加速宇宙線の種類の特定についても、2023年度に出版されたTeVガンマ線観測結果に基づき大きく進展している。以上のことを踏まえ、本研究は当初の計画以上に進展しているということができる。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は引き続き星間物質のデータ解析を行う。2023年度にALMAの追加観測提案を行なったが、結果は不採択であった。当該領域の追加観測は急務であるため、2024年度に引き続き追加観測提案を行う予定である。またここまでの解析結果をまとめた論文を執筆・出版予定である。また、2024年度は電波干渉計MeerKATで観測されたSS433の偏波観測データの解析を行う予定である。既に環境構築は完了しているため、早期にデータのダウンロードを行い、解析を開始する。2024年度内にデータの較正を完了し、偏波解析を行うのに十分な質のイメージの作成を目指す。
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