2023 Fiscal Year Research-status Report
水素同位体比から探る地球と火星の水の起源と供給プロセス
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23K13156
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
齊藤 大晶 北海道大学, 理学研究院, 研究院研究員 (00798382)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 原始惑星 / 火星 / 揮発性物質 / 分配 / マグマオーシャン / コア / 原始大気 |
Outline of Annual Research Achievements |
[本年度の研究成果] 火星サイズの原始惑星における大気-マントル-コア間での揮発性物質の分配を定量的に解明することを目的としていた。対象とする揮発性成分には, 水, 水素, メタン, 炭素を対象とした。これら揮発性成分の分配は惑星の内部磁場生成, マントル対流, 及び火成活動に重要な影響を及ぼす可能性がある。 具体的には, 先に述べた揮発性成分がマグマオーシャン-コア-原始大気の間でどのように分配されるかを定量的に分析するモデルを構築した。このモデルは, 原始惑星が形成される過程での集積率を熱源とするパラメータとして採用し, 一次元放射対流平衡モデルを構築することで、地表面温度から惑星ヒル面までの温度構造を数値的に再現した。地表面温度が典型的な岩石融点を超えた時点で、揮発性成分が惑星のマントルやコア、大気にどのように分配されるかを計算することが可能になった。
[主な成果の意義] 大気と内部への分配: 原始惑星が火星の現在の半分の大きさに達した段階で、水蒸気、炭素、水素が原始大気から惑星内部へと分配され始める。最終的に火星サイズに原始惑星が成長する頃には、現在の地球の海水量 (10^21 kg) ほどの水がマントルに, 約 10^20 kg の炭素と約 10^19 kg の水素がコアに分配されうることがわかった。本モデルによる結果は、現在進行中である InSightをはじめとする火星観測データとの関連付けを可能にすると考えられる。また惑星の大気成分の起源についての知識を拡張する重要な成果の第一歩となると期待している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的として、数値シミュレーション開発と検証を上げていた。具体的には、既存モデル改良し、放射や化学過程を考慮し、惑星材料から大気・内部へ分配される揮発性成分の質量保存を厳密に解くモデルを構築することであった。現在、基本的な大気・内部(マントル・コア)間の揮発性成分の定量的な推定が概ね可能となったため。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に沿って、惑星軌道、質量、集積率、材料物質中の揮発性成分濃度など、多くのパラメータを考慮に入れた数値シミュレーションを実施し、大量のデータを収集・解析しる。また、現段階では水素の同位体比を考慮したモデルを実装していないため、このモデルの構築を進め、火星サイズと地球サイズの惑星での同位体比の違いを定量的に求める。これにより、異なるサイズの惑星間での水の起源と供給過程についての予測的なシナリオを提案することを目標とする。
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Causes of Carryover |
本年度はモデルの構築に時間を費やしたことから、学会・研究会等の発表を実施することができなかった。現在論文等の成果も出つつあることから、次年度以降は精力的に学会・研究会にて成果報告を実施する予定である。
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