2023 Fiscal Year Research-status Report
火山浅部での低周波地震を励起する熱水やマグマの振動過程の解明と活動監視への応用
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23K13181
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田口 貴美子 東北大学, 理学研究科, 助教 (80965335)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | 火山性地震 / 熱水 / マグマ / 流体特性 / 火山監視 |
Outline of Annual Research Achievements |
火山活動の活発化に伴い浅部で発生する低周波地震(long-period (LP)イベント)および超低周波地震(very-long-period (VLP)イベント)は突発的な噴火に先立つものもあることから、これらの地震の発生過程解明は噴火準備過程を理解するうえで重要である。本研究では観測波形の周波数や振幅などから振動源(熱水やマグマを含む割れ目を想定)の流体特性(音速、密度など)やサイズ(体積、長さなど)、圧力変化に関するパラメータを推定し、火山浅部で発生しうる現象のモデル計算と比較することでLPおよびVLPイベントの発生過程を解明することを目指す。 2023年度は、2022年度から着手していた振動源の流体特性およびサイズに関するパラメータの推定方法の改良を行った。改良する以前は草津白根山で1990年代に観測されたLPイベントについて、波形の周波数や減衰率に基づき上記のパラメータ推定を行っていた。しかしこのうち一部の波形については、振幅を説明できない場合があることがわかっていた。ここで振幅を説明できるイベントに対して振動源の流体特性およびサイズのパラメータ推定値を整理すると、振動源として仮定した割れ目の厚さ変化量がある一定の範囲をとることが分かった。この厚さ変化量は、波形振幅から求めた地震モーメントおよび割れ目長さと幅に依存して変化する量である。このことから割れ目の厚さ変化量を一定値として、観測波形の周波数と減衰率に加え地震モーメントも用いて解析を行うアルゴリズムを作成した。これにより上記の振幅を説明できなかったイベントについても周波数、減衰率、振幅すべてと整合するような振動源サイズと流体特性を推定できるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画当初はLPイベント震源の振動源サイズや流体特性の推定に加え、観測波形の周波数スペクトルのピークに対する固有振動モードの同定、および振動励起(流体の圧力変化)の時間スケールの推定を行い、それらをもとにした割れ目振動の数値計算の結果に基づき励起メカニズムや力源の向き、大きさを推定する予定であった。しかし研究実績の概要にも記載の通り、振動源サイズや流体特性の推定値を用いて計算される割れ目振動に伴う合成波形の振幅が観測波形のものと整合しない例があることが新たに分かった。この要因を突き止め、それを考慮した解析アルゴリズムを作成するのに予定していたよりも大幅に時間がかかってしまった。このアルゴリズム作成は今後の研究計画を進めるうえで必要不可欠のものではあったものの、2023年度に行う予定であった固有振動モードの同定や震源での割れ目振動を励起する力源の向きや大きさの推定までは行うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度に改良した解析アルゴリズム中で用いる振動源の割れ目厚さ変化量の値は、1990年代に草津白根山で観測されたLPイベントを対象として算出されたものである。このため2024年度はまず草津白根山で他の解析期間に観測されたLPイベントのほか、霧島硫黄山や岩手山、磐梯山などで観測されたLPイベントやVLPイベントに対しても上記の解析アルゴリズムを適用できるかどうかを精査し、必要に応じさらなる改良を行う。そのうえで、前年度に未実施となった観測波形の周波数スペクトルピークに対する割れ目振動のモード同定や振動励起時間スケールの推定を行う。こうして得られた振動源の流体特性や体積、励起時間スケールをもとにして得られる割れ目振動の波形の寄与を観測波形から差し引き、そこに波形インバージョンを適用することで波形励起部分のメカニズムや力源の向き、大きさを推定する。
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Causes of Carryover |
2023年度は主に本研究が対象とする火山性低周波地震の解析プログラムの改良に時間を費やすこととなったため、計画当初に参加を予定していた国際学会までに発表を行うに足る成果が得られなかった。2024年度は前年度後半に得られた結果をもとにした発表を国際学会で行う予定であり、その旅費として2023年度の未使用額と2024年度予算を合わせて使用する。
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