2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23K13208
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
李 佩瑩 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (00862062)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 生命の起源 / リボザイム / ペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
現存生命においてRNAが遺伝情報を保存すると同時に触媒機能も担いうることから,RNAから初期生命の進化が開始したという仮説 (RNAワールド仮説)が有力である.ここで,RNAが増殖して生命の様に進化していくためには,①自己を外界から隔て散逸を防ぐ細胞様構造の形成,②自己複製を繰り返すサイクル反応の2点が必要である.しかし,RNAは負電荷でお互いに反発し合うため,RNAだけでこの2点の条件を満たすのは困難である.一方,短鎖ペプチドはRNAよりも合成しやすく,生命誕生以前に既に存在しRNAの機能を補助しただろうと考えられている.そこで本研究では,RNA結合性正電荷ペプチドを用いて細胞様構造体を作成し,その内部でのRNA酵素の増幅反応の実現を目指す.実験室で生命誕生過程を再現することは太古地球での生命誕生プロセスを解明するための重要な手掛かりとなると期待できる. 本年度は,単純配列を持つRNA結合性ペプチドを用いて,液-液相分離(LLPS)により安定な液滴構造体の形成に成功した.その様な液滴構造はRNAを吸着する機能を持ち,それによりRNAポリメラーゼリボザイム(RPR,リボザイムの一種)を液滴中に濃縮することも成功した.RPRの様な大型リボザイムは構造安定性が弱く,液滴構造内で容易に変性し活性を失ってしまうことがすでに知られている.今回新たに構築された液滴構造が大型リボザイムの活性を促進することを発見した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画当初のペプチド液滴構造体とはやや異なったものの,細胞様液滴構造体において大型リボザイムの濃縮及び活性化に成功し,これまでに液滴構造内での大型リボザイムの失活問題を克服した.本年度の目標を達成したと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は引き続き,細胞様構造におけるRNA自己複製の実現に向けて,ペプチド液滴の存在下でリボザイムの試験管内進化実験を行い,さらに活性の高いかつ構造が安定なリボザイムを探索する.
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Causes of Carryover |
大型リボザイムを活性化する機能を持つ液滴構造体の構築は計画当初よりも早く進んでいて,その結果,ペプチドなどの試薬の消耗が予定よりも少なくなった.その差額に関しては,次年度に行うリボザイムの進化実験の実施において,RNAやペプチドなどの試薬の購入に充てる予定である.
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