2023 Fiscal Year Research-status Report
水晶振動子(QCM)と表面間力測定装置の同時測定による表面間相互作用の解析
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23K13244
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
石川 功 鳥取大学, 工学研究科, 助教 (70845164)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | QCM / 表面力測定装置 / 共振周波数変化 / アドミタンス特性 / 力学モデル / PDMS / BK7 (ガラス) / 等価回路 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は以下の3つの事項において研究を進めた:(1)QCMを用いた接触・引き離し実験,(2)QCMの表面力測定実験から得られた電気特性の解析,(3)QCMの接触実験を力学モデルに置き換えて導出した周波数シフト特性の解析. (1)の実験については,実験を大気環境下で測定した.その結果,BK7(ガラス球)のヤング率の大きい物質では接触により共振周波数が増加する一方,PDMS(ポリジメチルシロキサン)球では接触により共振周波数が減少することを再確認した.掃引周波数を変えたり,QCMの電極材料を変化させて実験も行ったが,それらの特性は変化しなかった. (2)の電気特性の解析については,水晶振動子の共振曲線からアドミタンス特性を測定し,電気的な側面から接触・引き離し実験を解釈する方法を試した.まだ,解析段階ではあるが,接触による水晶振動子のアドミタンス円を取得し,サセプタンス・コンダクタンスを用いて,等価電気回路における抵抗R・電気容量C・インダクタンスLを数値化することができた. (3)の力学モデルにおいては,球と平面(QCM)の接触を力学モデルにおけるばねで接合されていると仮定し,共振周波数を理論的に導出した.その結果,実験で得られた共振周波数の変化(BK7球では正に変化,PDMS球では負に変化)の特性を定性的に示すことができた.実際に実験結果で用いた各種材料のパラメータ(密度やヤング率などの物理定数)を代入して理論的に共振周波数を求めてみたが,BK7球ではよい一致を示した一方,PDMS球では理論値と実験値に大きな差が見られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験については順調に進んでいる。実験結果の報告については学会発表・学術論文として引き続き報告していく予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の業績で示した3項について引き続き進めていく. (1)の実験については,2023年度において大気中における実験のデータは十分に集まったので,2024年度では水中における実験を行っていく予定である.QCMはいろいろな環境下において手軽に実験が行えることも大きな利点であるため,水中においての接触・引き離し実験による共振周波数特性についても調べていきたい. (2)の電気特性の解析については,2023年度に得られた等価電気回路における抵抗R・電気容量C・インダクタンスLを接触時と非接触時で比較することにより,元から生じていた抵抗R0・電気容量C0・インダクタンスL0と接触によって生じる抵抗R'・電気容量C'・インダクタンスL'に分離したいと考えている.また,後者をより詳しく解析することにより,接触によって生じる各種特性の変化を電気特性を用いて説明できるのではないかと考えている. (3)の力学モデルについては,2023年度に定量的に説明できなかったPDMS球の計算をより詳細に調べる予定である.現在は振動が伝わる減衰長の考慮が足りなかったのではないかと考えており,減衰長を考慮したモデルに修正することによって定量的に説明できないかを試みている.もし,その方法でも難しければ,これまで計算していたばねと質量によって構成していた力学モデルにダッシュポット(粘性の考慮のため)を取り入れて再度計算してみようと考えている.
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Causes of Carryover |
2023年度12月頃に本研究で用いる表面力測定装置の測定ユニットに問題が生じた.修理に多額の支出が生じる可能性を考慮したため.
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