2023 Fiscal Year Research-status Report
複雑構造周りにおける成膜現象への接触角ヒステリシスの影響の解明
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23K13250
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
杉本 真 東北大学, 工学研究科, 助教 (60966852)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 気液混相流 / 格子ボルツマン法 / フェーズフィールドモデル / 多孔質構造 / 浸潤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,(1)三次元複雑構造周りにおける接触角ヒステリシス(前進・後退接触角)および液相の蒸発現象を高精度に再現可能な,汎用的気液混相流現象解析ツールの開発を行うこと,(2)開発手法を用いて複雑構造周りにおける液滴蒸発の大規模解析を実施し,三次元溶質膜形状に対して接触角ヒステリシスが及ぼす影響を解明することの2点である.目的(1)に関連して,固気液三相の温度場を高精度にシミュレートする必要があるが,気液界面において非物理的な熱の輸送が生じることがわかった.この問題の原因は,気液界面における圧力と界面張力の不均衡によって生じる非物理的な速度ベクトルであることがわかった.非物理的な速度場を用いて熱エネルギーの輸送方程式の移流項を計算することで,非物理的な熱輸送が生じることがわかったため,本研究では,熱エネルギーの移流拡散方程式を解くための前段階として,移流項を含まない拡散方程式を解析可能な手法の開発を行った.本手法を応用することで,元々移流項を含まない電磁ポテンシャルの定常拡散方程式を解くことが可能である.本研究では気液間で導電率の異なる電磁混相流体のシミュレーションに適用した.また,目的(2)に関連して,マイクロスケールの多孔質構造内部へと浸潤する液滴および液膜の数値シミュレーションを実施し,多孔質構造表面の濡れ性ならびに多孔質構造への液膜の押込圧力による液の浸潤率への影響を調査した.その結果,多孔質構造を構成する節の接合部分に接触線が触れたときに浸潤速度が上がることがわかった.この知見は異材接合技術などの向上に資すると期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
スカラー場の拡散方程式を解くための手法の開発には成功したが,移流項を含む輸送方程式の計算では未だ非物理的な熱輸送が生じる問題が残されている.したがって,本研究課題の達成度としてはやや遅れているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,引き続き「現在までの進捗状況」で述べた問題の解決を図る.気液界面周りの速度場の誤差が,問題の主要因であることは突き止められているため,界面張力モデルを見直すなどの方策を講じる予定である.また,それとは別に固相表面における接触角ヒステリシスの実装を行い,多孔質構造内部への浸潤現象に及ぼす影響を明らかにする予定である.
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Causes of Carryover |
GPUワークステーションが想定よりも安価に購入できたため,次年度使用額が生じた.次年度使用額は学会への参加費・出張旅費ならびに論文投稿料に充てる予定である.
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Research Products
(4 results)