2023 Fiscal Year Research-status Report
リチウムイオン電池の劣化メカニズムに基づく健全度診断技術の開発
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23K13327
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Research Institution | Japan Automobile Research Institute |
Principal Investigator |
安藤 慧佑 一般財団法人日本自動車研究所, 環境研究部, 研究員 (80866161)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | リチウムイオン電池 / 劣化診断 / 健全度 / インピーダンス / ヒステリシス |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者はこれまで、リチウムイオン電池の負極ハーフセルについて、充電状態(SOC) 0%から充電によりSOC調整した後に測定するインピーダンススペクトル(充電調整インピーダンス)と、SOC 100%から放電によりSOC調整した後に測定するインピーダンススペクトル(放電調整インピーダンス)は、同じSOCであってもスペクトルの形状が異なることを見出した。また、充電調整インピーダンスと放電調整インピーダンスの差異はSOC依存性があることを確認している。 本研究では、リチウムイオン電池の負極インピーダンスのSOC依存性を応用した新規で科学的かつ実用的な健全度診断技術を開発することを最終目標に、(1)負極インピーダンスにおいて充放電ヒステリシスがなぜ発生するのか、(2)負極インピーダンスにおける充放電ヒステリシスのSOC依存性がなぜ発生するのか、について解明することを目的とする。 一般的にリチウムイオン電池を満充電した際、その中の負極のSOCは80%程度である。そこで、負極をSOC 80%まで充電した後に、(a)1Cで10秒放電を行った後にインピーダンス測定、(b)C/20で放電しながらのオペランドインピーダンス測定、をそれぞれ検証したところ、充電調整インピーダンスから変化はなかった。 一方で、負極SOCを0%→100%→0%、0%→90%→0%、0%→80%→0%、0%→70%→0%と変えながらインピーダンス測定をしたところ、上限が高い時(0%→100%→0%など)はインピーダンスにヒステリシスが現れるが、上限が高くない時(0%→80%→0%など)はインピーダンスのヒステリシスが起こらないことを確認した。この理由として、グラファイトの充放電反応が二相共存型であり、充放電を折り返す負極SOCによって、コアシェル構造に違いが生じるためだと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的の(1)負極インピーダンスにおいて充放電ヒステリシスがなぜ発生するのか、(2)負極インピーダンスにおける充放電ヒステリシスのSOC依存性がなぜ発生するのか、については、負極SOCの上限を変えることでインピーダンスのヒステリシスが変化することを見出しており、解析が進んでいる。一方で、負極SOCの上限が変わるとインピーダンスのヒステリシスに違いが生じてしまうため、インピーダンスのヒステリシスを応用した健全度診断技術の開発には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、負極SOCの上限を変えながらのin-situ ラマン測定により構造解析を行うことで、(1)負極インピーダンスにおいて充放電ヒステリシスがなぜ発生するのか、について解明していく。またLiFePO4やLi4Ti5O12などの他の二相共存型の材料についても同様に評価・解析を行うことで、理解を深めていく。
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