2023 Fiscal Year Research-status Report
量子暗号通信の長距離化・高速化を実現する単一光子検出用集積素子の開発
Project/Area Number |
23K13343
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
稲葉 工 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究員 (80822634)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | クライオCMOS / 超伝導単一光子検出器 / 極低温デバイスモデリング / 深層学習 / モノリシック集積 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではシリコン電界効果トランジスタ(MOSFET)と超伝導回路(単一光子検出器)のモノリシック集積を行う。特に、MOSFETと単一光子検出器のプロセスを独自に行うことで、回路設計に自由度を持たせ、より高い光子計数率を狙う。 本年度は、トランジスタを試作するファブである産総研COLOMODEと超伝導回路を試作するファブである産総研Qufabの双方で利用できる微細加工装置の位置調整用マーク設計を行った。またCOLOMODEをロットアウトしたウエハをQufabに持ち込むために不可欠な汚染検査を行い、目的とする素子開発に必要な環境を整備した。この成果は、FinFETなどの先端半導体試作が可能なファブから超伝導回路の試作に特化したファブへのウエハ流動を初めて実現し、申請者以外がCOLOMODEとQufabを利用した素子開発を行う際にもその技術的障壁を大きく下げる重要な成果である。 また極低温動作回路設計に不可欠な極低温デバイスモデリングに取り組んだ。具体的には、初期検討として、4ケルビンにおけるプレナー型MOSFETのデバイスモデリングを行った。その結果、室温動作MOSFET用に提案されているBSIM4を使った場合、モデルパラメータの物理的意味を看過すれば、極低温動作用にデバイスモデルの修正を行わなくても回路設計が行える程度のデバイスモデリングが行えることが明らかになった。さらに、ここで決定した極低温デバイスパラメータを基にして増幅回路の設計を行った。 当初の予定になかったものの、ニューラルネットを利用した極低温動作MOSFETの特性予測に取り組んだ。このニューラルネットを用いれば、労力のかかる極低温動作MOSFETの特性評価をほとんど行わずとも極低温デバイスモデリングを行い、集積回路設計に繋げられる。 従ってこのニューラルネットは集積回路設計に係る産業に大きな価値をもたらす。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に従い、モノリシック集積に向けた環境整備を済ませ、回路設計に必要な極低温デバイスモデル、増幅回路設計を行った。 さらに計画推進に深層学習を活用した成果を国内学会で発表し、査読付き論文投稿のめどを立てた。 これらの点を踏まえ、計画は順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
計画通りMOSFET上に超伝導回路を形成する。 但し、当初計画していたFinFET試作は本研究期間中にプロセスを確立できないと判断し、より確立した技術であるプレナー型MOSFETに切り替えていく。 また深層学習を活用した計画推進にも取り組んでいく。
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Causes of Carryover |
FinFET試作のプロセスフローに不備が見つかったのでプレナー型MOSFETを利用したモノリシック集積に切り替えた。 またファブの装置トラブルなどによって次年度に延期されたプロセス分の費用が次年度繰り越しとなった。
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