2023 Fiscal Year Research-status Report
超伝導単一光子検出器の高速多重化に向けた波形整形手法の開発
Project/Area Number |
23K13381
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
知名 史博 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター, 研究員 (90912436)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 単一光子検出器 / 超伝導ナノストリップ単一光子検出器 / 超伝導量子干渉素子 / ジョセフソン接合 / 超伝導デバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
超伝導ナノストリップ単一光子検出器 (SNSPD) は高効率な単一光子検出器であり、量子2.0と総称される量子コンピュータ、量子センシング、量子ネットワークといった分野での応用が期待されている。このような分野での応用には高検出効率はもとより、高い読み出し速度および優れた拡張性も求められるため、独立した多数のSNSPDを高速かつ低消費電力に読み出す信号多重化方式が重要課題となる。またSNSPDの出力信号は数十ナノ秒もの時間幅を持つため、複数のSNSPDが同時に光子検出した際にも高速に信号弁別する機能も求められる。本研究ではこのようなSNSPD信号多重化回路の実現に向けて、SNSPD信号をごく短い時間幅のパルス信号に変換する波形整形回路を開発することを目的としている。 本年度は超伝導量子干渉素子 (SQUID) を用いたSNSPD波形整形回路の設計および作製に取り組んだ。微小なSNSPD信号を高感度に読み出すため、数値シミュレーションによる波形整形回路の動作解析およびパラメータ最適化を行った。また波形整形回路を基盤とした4チャンネルSNSPD多重化回路を設計した。このとき、全てのSNSPDが同時に光子を検出した場合においても、全信号を弁別しかつ高速読み出しが可能なことを数値シミュレーションにより確認した。次に最適化した回路パラメータに基づいて波形整形回路の物理レイアウトを設計し、ニオブを積層した超伝導回路プロセスにて評価用回路を試作した。試作した回路チップは液体ヘリウムを用いた測定系にて評価を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は数値シミュレーションによりSQUIDを用いたSNSPD波形整形回路の設計および動作解析を実施し、SNSPDの出力信号レベルに対して電流感度が十分に高いことを確認した。また小規模SNSPD多重化回路の設計および、超伝導積層プロセスによる評価回路まで実施できている。これまでに液体ヘリウムを用いた極低温測定により作製した回路チップの静特性を評価しており、良好な結果が得られている。以上から、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は作製した回路チップの極低温評価に継続して取り組む。測定結果をもとに回路パラメータの異なる波形整形回路をいくつか作製し、高速動作性や電流感度などの回路特性評価を実験的に行う。その後、SNSPDと波形整形回路をギフォード・マクマホン型冷凍機に導入し、波形整形回路の実証実験を実施する。
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Causes of Carryover |
研究代表者の異動に伴い、素子設計や作製、測定評価環境が大幅に変化したため、使用計画を変更する必要が生じた。次年度は実験に必要な消耗品や物品費に当初計画よりも多くあて、回路の作製・評価を推進し成果発信に繋げたいと考えている。
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