2023 Fiscal Year Research-status Report
気候変動を考慮した複合氾濫に対する総合的なハザード評価
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23K13411
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
豊田 将也 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70908558)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 複合氾濫 / 台風 / 高潮 / 洪水 / 気候変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,研究①擬似温暖化台風経路アンサンブル実験による多数の台風経路に基づく複合氾濫リスク評価と,研究②大規模アンサンブル気候予測データd4PDFを用いた,三大湾に対する複合氾濫評価を実施した. 研究①については,伊勢湾・三河湾の湾奧域と接続する11河川を含む広範囲を対象に計算した.台風外力には2019年台風19号(Hagibis)をベースとして,計20ケースの台風経路を設定した.その結果,高潮偏差および洪水がともに大きくなる経路は,三重県沿岸部を北上する台風経路であることが明らかとなった.また高潮と洪水のピーク時刻差 (ΔT)は河道の長さと高い正の相関を示し(相関係数:0.9),さらに小規模河川ほど大河川よりも高潮と洪水の同時生起性が高いことを明らかにした.また将来気候では伊勢湾ではほぼすべての台風経路,三河湾では高潮が2.8mを超える台風により,沿岸部・河道付近を中心に氾濫が発生した. 研究②については,東京湾・伊勢湾・大阪湾を対象に,現在気候3000年分,4度上昇気候5400年分のデータを用いて,計13水系における高潮・洪水の同時生起性について評価した.解析の結果,将来気候では,同一台風により高潮・洪水がともに最大イベントとなるケースは約3%増大することが明らかとなった.最大高潮偏差と最大流量の時刻差について解析した結果,両者のピーク時刻差の将来変化は,各水系のアンサンブル平均で0.7時間短くなることが明らかとなった.この傾向は,現在気候で時刻差が大きい水系ほど顕著であった.またその要因として,台風降雨による流量の立ち上がりからピークまでの時間が短縮することが考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では,力学モデルによる評価とアンサンブルデータによる統計的な評価は,年度毎に実施する予定であった.しかし本年度のワークステーションによる計算速度の向上,および解析プロセスの高速化により,両方を実施し,共に成果を得ることができた.したがって当初の計画以上に進展していると判断した.次年度以降は,社会的貢献度合いの高い,外力の統計的・確率的評価に重点をおく予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
本計画では,高潮・洪水による複合氾濫について,①力学的モデルの評価および②確率的評価を実施する予定であり,①については,現在までに気候変動影響を含めた評価まで実施できている.②についても,高潮偏差と洪水流量に関する評価はできている.今後は,高潮・洪水を引き起こす外力(暴風,大雨)に着目した解析を実施する予定である.
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