2023 Fiscal Year Research-status Report
線状対流系への水蒸気流入素過程の解明を通した新たな温暖化予測手法の構築
Project/Area Number |
23K13414
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
仲 ゆかり 京都大学, 防災研究所, 助教 (30909445)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 水蒸気輸送過程 / 内陸豪雨 / 大気安定度 / フルード数 / 温暖化予測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,大気の安定度やフルード数が日本の内陸部への水蒸気輸送過程に与える影響に着目し,数値シミュレーションによってその影響の解明を試みた. 大気の安定度が高ければ,大気の流れは地形などの障害物を水平方向に回り込んで奥へと流れ込むため,内陸で発生する豪雨に水蒸気が輸送される過程にとって大気の安定度は重要なファクターであると仮説を立てて,近畿地方を対象にして大気安定度の関する感度実験を行った.その結果,大気の安定度が高いほど,紀伊水道を通って近畿内陸部へ輸送される水蒸気量が多くなる傾向を明らかにした. さらに,無次元数フルード数と水蒸気輸送過程の関係を,同様に数値シミュレーションによって解析を行った.その結果,フルード数がある特定の値(フルード数≒0.35~0.7程度)を示すときに,大気は地形と地形の間を加速しながら奥へと流れ込み,水蒸気もより効率的かつ豊富に内陸へと輸送されることを明らかにした.実際に,過去に近畿地方で発生した内陸豪雨の際は,大気場がその特定の値のフルード数を示していることを確認した.また,フルード数を変えた感度実験を行った結果,特定の値以外のフルード数(例えばフルード数>1)を示すときは,紀伊水道より手前の地形で水蒸気が持ち上がることで地形性豪雨が発生し,局所的な内陸豪雨へは繋がらないことを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,数値シミュレーションや過去の豪雨事例解析を中心に,内陸への水蒸気流入過程のメカニズムに関して着実に解析を進めることができたため,概ね順調に進展している.今後は,温暖化による水蒸気輸送過程の将来変化解析を進めるとともに,より局所的な地形と水蒸気輸送の効果についても解析を進めていき,研究計画の遂行にあたる予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,気候モデルによる温暖化予測情報データの解析や,温暖化条件下での数値シミュレーション実験を行う事で,地球温暖化が内陸への水蒸気輸送過程へ与える影響について解析を進める予定である.特に,数値シミュレーションでは詳細な地形を条件とした高解像度シミュレーションを行う事で,解像度の粗い気候モデルで出力されている温暖化予測情報では捉えきれない水蒸気輸送過程の変化を明らかにし,その上で,内陸豪雨が将来どのように変化し得るかの知見を創出することを目指す.水蒸気輸送という素過程から演繹的に内陸豪雨の将来変化予測を行う取り組みは独自性が高く,本研究で今後積極的に推進していく点である.
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Causes of Carryover |
旅費使用が当初の予定より少なくなったことに加え,論文投稿準備に時間を要したため,次年度使用額が生じた.現在,論文投稿準備を進めているため,次年度に投稿プロセスを進める予定である.
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Research Products
(5 results)