2023 Fiscal Year Research-status Report
マイクロ波スキャニングによる雪氷の状態判別とその水平分布に関する実験的研究
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23K13427
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
田中 康弘 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 研究開発員 (00807638)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | マイクロ波放射 / 雪氷 / 路面 / 滑走路 / リモートセンシング / 寒冷地 / 冬季 |
Outline of Annual Research Achievements |
一般的に空港滑走路面の管理では、目視により除雪の開始や航空機の離発着の判断が行われている。しかし、広大な滑走路面の雪氷状態(雪質、雪厚、分布)を客観的かつ効率的に判別・計測することが難しい。本研究は、水分を含む雪氷状態とマイクロ波放射特性の関係を実験的に解明することで、空港滑走路における雪氷の状態判別とその水平分布計測手法の開発に挑戦する。 2023年(初年)度は、雪氷の水分の違いに敏感な低周波のマイクロ波放射計を利用し、すべりやすい路面の原因となる濡れ氷や濡れ雪がマイクロ波放射(放射率)に与える影響を明らかにし、それらの判別が可能かを調べた。また、放射特性は偏波、入射(計測)角等の計測条件にも影響を受けるため、偏波や入射角を変えることで放射特性の偏波の違いや入射角依存性を調べた。これらの結果、以下(1)と(2)の成果が得られた。 (1)乾き雪と濡れ雪:放射率の違いは垂直偏波で約0.2の違いを示し、幅広い入射角で乾き雪と濡れ雪の違いに敏感であることが明らかになった。これは、垂直偏波が乾き雪と濡れ雪の2種判別に有利である可能性が非常に高い。 (2)乾き氷と濡れ氷:放射率の違いは、水平偏波で約0.1から0.15の違いを示し、幅広い入射角で水平偏波が垂直偏波よりも乾き氷と濡れ氷の違いに敏感であることが明らかになった。これは、水平偏波で乾き氷と濡れ氷の2種判別に有利である可能性が高い。 これらの成果を踏まえて、(1)の乾き雪と濡れ雪、または(2)の乾き氷と濡れ氷の放射特性と2種判別の可能性を明らかにしたことに加え、幅広い入射角で(1)と(2)の成果が有効であるという知見を2023年度中に得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は当初の計画通り、低周波のマイクロ波放射計を用いた放射測実験とそのデータ解析を実施し、濡れ雪と濡れ氷のマイクロ波放射特性を調べた。乾き雪と濡れ雪の放射率を比較した結果、低周波の垂直偏波が乾き雪と濡れ雪の2種判別に有利であることを明らかにした。また、乾き氷と濡れ氷の放射率を比較した結果では、低周波の水平偏波が乾き氷と濡れ氷の2種判別に有利であることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の成果としては、新たな知見である路面上の乾き雪や濡れ雪等の水分の有無がマイクロ波放射特性に与える影響を明らかにした上で、乾き雪と濡れ雪、または乾き氷と濡れ氷のそれぞれ2種に判別できる可能性を示すことができた。しかしながら、濡れ雪と濡れ氷(乾き雪と乾き氷)の両者が水分を含む(含まない)ような場合、低周波のみでは濡れた雪氷(例えば、濡れ雪と濡れ氷)を判別することが難しかった。この問題を解決するため、今後の研究では他の周波のマイクロ波放射計測データの取得・解析を実施し、湿り雪(水分少)とシャーベット(水分多)の両者を対象に、両者の検知が可能かどうかを調べる。また、危険な雪氷状態の一つである氷上に雪が堆積した二層状態が検知できるかの可能性も調べる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は、当初査読付き論文への投稿費として使用する予定であった。現在、該当論文は査読中であるため、次年度使用額は次年度に論文が受理された後、論文投稿費として使用する予定である。
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