2023 Fiscal Year Research-status Report
メタンの消費と生成に関与する新規微生物が織りなす未知の炭素循環の解明
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23K13431
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
蒲原 宏実 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭研究開発プログラム), ポストドクトラル研究員 (90967994)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | メタン / メタン酸化細菌 / Mycobacterium |
Outline of Annual Research Achievements |
メタンは強温室効果ガスとして知られており、その効果は二酸化炭素の約25倍にも及び、最近では地球温暖化抑制として、メタンの削減が重要であることが国際的に注目されている。本研究では、未知のメタンサイクルを解明するために、新規メタン関連微生物および反応を探索する。今回、メタンを炭素源として供給し、高アンモニウム濃度を維持したDown-flow Hanging Spongeリアクターから、新規メタン酸化細菌の分離培養に成功した。この分離株は、これまでに分離例のないMycobacteriumに属する。従来、メタン酸化細菌はアンモニアによる拮抗阻害が起こることが知られているが、この分離株はアンモニウム濃度が非常に高い環境であっても、メタン酸化活性を示すことが分かった。従来のメタン酸化細菌、あるいはMycobacterium属細菌に比べて増殖が遅いが、至適温度、pH、アンモニウム濃度を決定することで、菌体回収の効率を上げることができた。また、形態学的な観察も行い桿菌であることが分かった。細胞壁表面の状態は、アンモニウム濃度によって変化することも観察された。さらに細胞外に物質が分泌されている様子を確認することができたが、その物質の同定には至っていない。 また、この分離株を得たリアクターからは、他にも新規メタン酸化細菌の存在が示唆されている。高濃度アンモニアに耐性のあるメタン酸化細菌である可能性も高く、メタン酸化細菌のアンモニア耐性機構を評価するために、これらの微生物についても分離培養実験を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規メタン酸化細菌の分離培養に成功し、生理学的特性を決定できた。ただし、増殖速度が遅いことから、基質利用特性などの調査が完了していないので、上記の評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
従来のメタン酸化細菌と異なりメタン酸化するMycobacterium属が、なぜアンモニウム耐性を持つようになったのかを明らかにするために、メタンとの親和性を調査する。また、メタン酸化機能の獲得経緯を調査する。
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Causes of Carryover |
増殖速度が遅いことから実験が長期化しており、遺伝子解析が進められていない。次年度は、なぜアンモニウム耐性を持つようになったのかを明らかにするために諸条件での実験を予定しおり、これに関連する遺伝子発現解析費用として使用する。また、新規に立ち上げたリアクターでは、想定よりも培養期間が長くなってしまい、当初予定していた遺伝子解析を次年度に実施する。
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Research Products
(1 results)