2023 Fiscal Year Research-status Report
Critical earthquake ground motion model using impulse sequence for estimating cumulative plastic deformation
Project/Area Number |
23K13439
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
小島 紘太郎 京都工芸繊維大学, デザイン・建築学系, 助教 (10822786)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | マルチインパルス / トリプルインパルス / 最悪地震応答 / 塑性率 / 累積塑性変形倍率 / 損傷度 / 入力エネルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、パルス性地震動と長時間地震動を統一的に表現可能な設計用インパルス列地震動モデルを提案し、最悪地震応答に基づく耐震性能評価法の確立を目的とする。 インパルス列地震動として、最初と最後の速度振幅を0.5倍としたマルチインパルス地動を用いて、超高層建物の弾塑性共振応答(最悪地震応答)時の梁端部の損傷評価を行った。具体的には、バイリニア型復元力特性を有する20自由度せん断質点系を対象に、インパルス数(2~20)と速度振幅を変動させて、極限的マルチインパルス地動に対する塑性率と累積塑性変形倍率を求め、層毎の梁端部の損傷度を評価した。さらに、梁が損傷するインパルス数と速度振幅の関係を求めた。異なるインパルス数とインパルス速度振幅の極限的マルチインパルス応答を比較するために、建物への総入力エネルギーを計算し、損傷度との関係を求めた。また、1次モードに比例した速度分布を建物に与える擬似マルチインパルス外力に対する極限応答を求め、極限的マルチインパルス応答と比較した。 指向性パルスの近似であるトリプルインパルスに対するバイリニア型復元力特性を有する非減衰1自由度系の極限応答の評価法を提案した。トリプルインパルスは二つの時間間隔を有しているため、復元力が0となるタイミングで第2、第3インパルスが作用するトリプルインパルス(Input Sequence 1, IS1)と二つの時間間隔が等しいトリプルインパルス(Input Sequence 2, IS2)を仮定した。IS1の極限的トリプルインパルスに対してバイリニア型非減衰1自由度系の弾塑性応答の閉形解を導出した。降伏後剛性と弾性剛性の比が0.1以上の場合、IS1に対する閉形解を用いて、IS2における極限応答を精度よく評価可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年度では、設計用インパルス列地震動モデル(マルチインパルス)について再検討し、超高層建物をモデル化した20自由度のせん断質点系を対象に、インパルス数と速度振幅を変化させて、極限応答下における梁端部の損傷の評価を行った。また、インパルス数の異なるマルチインパルス間の極限応答の比較を容易とするために、総入力エネルギーの観点から極限的マルチインパルス応答を比較する方法を提案した。 一方で、設計用インパルス列地震動モデルのパラメターの検討について、その同定まで至らなかったこと、現時点ではせん断質点系を用いた梁端部の損傷評価のみにとどまっており、骨組モデルを用いた梁・柱部材の損傷評価まで至っていないこと、予定していた小型模型の振動台実験が実施できなかったことから、進捗状況は「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度の研究計画は以下の通りである。 (1)骨組モデルを対象に、インパルス列地震動モデル(マルチインパルス)に対する弾塑性極限応答を評価し、柱や梁などの部材の損傷を評価する。さらに、インパルス数とインパルス速度振幅が部材の塑性率、累積塑性変形倍率および損傷度に与える影響を評価し、設計で考慮すべきインパルス数とインパルス速度振幅について検討する。また、せん断質点系および骨組モデルを用いて、免震、制振構造を対象に極限地震応答下の免震部材、制振部材の損傷評価を行う。 (2)最悪地震動下の部材の損傷を抑制し、耐震性能を向上させることを目的とした柱・梁断面の最適化および免震、制振構造を用いた応答制御法について検討する。 (3)極限的マルチインパルス応答を再現可能な模擬地震動の作成方法を提案する。 (4)インパルス列地震動モデルの妥当性検証のための小型模型の振動台実験を実施する。
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Causes of Carryover |
2023年度はインパルス列地震動モデルの妥当性検証のための小型模型の振動台実験を予定していたが、極限応答下の建物の損傷評価に関する数値解析を優先して実施したため、振動台実験に用いる小型模型と治具の設計および検討対象とする入力地震波の作成まで至らず、振動台実験を実施できなかった。そのため、小型模型の振動台実験にかかる費用に関して次年度使用額が生じた。 2024年度では、2023年度の応答解析結果および2024年度に実施予定の骨組モデルを対象としたインパルス列地震動モデル(マルチインパルス)に対する最悪地震応答の再現が可能な模擬地震動の作成方法の構築を予定しており、その模擬地震動を用いた振動台実験を計画している。次年度使用額は、試験体と治具の作成および計測機器の費用に充てる予定である。 また、2023年度は既設のパーソナルコンピューターで数値解析を行ったため、数値解析に用いるパーソナルコンピューターにかかる費用に関して次年度使用額が生じた。2024年度は骨組モデルに対する時刻歴応答解析および最適化を行うことを計画しており、より高い計算処理能力が必要になる。そのため、次年度使用額を、数値解析に必要な高い計算処理能力を有するパーソナルコンピューターの費用に充てる予定である。
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